小児骨長管骨骨折の最新治療器具Elastic Stable Intramedullary Nail(ESIN)システムを君津中央病院で導入いたしました

更新日 2017.7.20

君津中央病院整形外科
藤由崇之

 小児における骨折治療は、ギブス固定が一般的に行われております。もちろん、骨端線が閉鎖する以前では、多少の骨折変形があっても自家矯正能力があり、変形が改善することが期待できます。しかしながら、骨折部が骨端線から遠ければ遠いほど許容範囲は小さくなります。また、不安定性の強い粉砕骨折、開放骨折などはギブス固定などの保存治療では限界があり手術が選択されることになります。 現在まで当院では、小児長管骨骨折では、ギブス固定、経皮的ピンニングやEnder釘を症例に応じて行っていました。ただし、術後もギブス固定が必要だったり、下肢に関しては4~6週間程度の荷重制限が必要であったり、本人やご家族の負担となっていることが多かったことと思います。

 そこで、今回導入した小児長管骨骨折の最新治療器具であるESINシステムは、最小侵襲に手術が可能であり、骨折部の高い安定性が得られるため、術後ギブス固定はほとんど不要で、比較的早期(1~2週間)から荷重開始が許可できるシステムです。但し、骨癒合後(術後約6か月後)にNailを抜去する必要があります。

 適応は3歳以上、50㎏未満の小児骨折で、前腕骨・上腕骨・大腿骨・下腿骨の骨幹部骨折、一部の骨幹端部および骨端部骨折となります。

 本システムは、研修を受けた医師しか手術を行うことができないため、全ての施設で行えるわけではございません。千葉県内の認定医師は、私の他に千葉市立青葉病院 六角智之先生、千葉大学医学部付属病院 松山善之先生、姫野大輔先生の4名です。また、当院では、千葉県内で唯一ESINシステムを導入している施設であります。

 今後、本システムにより小児長管骨骨折の治療方法が目覚ましく発展進歩すると思われます。是非、患者様およびご家族のためにも当システムにおける治療を周知させていただきたいと思います。 近隣の先生方からのご相談およびご紹介をお待ちしております。

DePuy Synthes社のカタログより掲載引用

症例1 10歳男児 小児AO分類:22r-D/5.1, 22u-D/5.1

受傷時と術後4週のレントゲン。 術後ギブス固定なしで前腕骨回内外、手関節・肘関節屈曲・伸展はフリーで経過中。

症例2 10歳女児 小児AO分類:32-D/5.2

受傷時、術直後、術後4週のレントゲン。 術後ギブスなしで術後2週より全荷重歩行許可。現在、疼痛はほとんど無く経過観察中。