産業連携共同研究創出支援プログラム 平成29年度研究助成受賞記

更新日 2017.11.6

平成13年卒
古矢 丈雄

産業連携共同研究創出支援プログラム 平成29年度研究助成

「脊椎脊髄手術・脳神経外科手術における癒着防止シートの開発」

 

古矢丈雄 (平成13年卒)

 

 この度、上記研究助成を採択いただきましたので報告申し上げます。この研究助成は学長裁量経費 (トップダウン型)事業の1つとして千葉大学学内で公募される助成事業の1つです。プログラムの趣旨としては、「企業との共同研究の創出・拡充を導くための研究支援を行い、産業連携共同研究活動強化・外部研究資金獲得強化を通じた研究力強化、更にはイノベーション創出を目指すもの」とあります。

 脊髄腫瘍や脳腫瘍など、脊椎脊髄病領域、脳神経外科領域の硬膜内操作を伴う手術の際に生じる、神経組織 (脊髄、脳)と周囲組織 (くも膜、硬膜)との癒着である「癒着性くも膜炎」は重要な未解決テーマの1つであります。癒着性くも膜炎は脳脊髄液の灌流障害をきたし、二次的な脊髄空洞症やくも膜嚢腫を生じ治療抵抗性の疼痛や麻痺を惹起することがあります。また、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症等の一般的な脊椎手術においても、術後に生じる硬膜と周囲軟部組織との癒着は時に大きな問題となります。再手術の際は硬膜の癒着によって手術の難易度は初回手術よりも格段に上がり、癒着部位の剥離操作の際に硬膜損傷や神経傷害を生じることがあり、患者の不利益に直結します。これら脊椎脊髄領域、脳神経外科領域の手術において、手術後の組織癒着を軽減させる手法や製品へのニーズは非常に高いと考えています。本研究では、他の診療分野で開発の進んでいる癒着防止剤を参考に、脊椎脊髄外科、脳神経外科領域の手術時に用いることのできる「癒着防止シート」の開発を目的としています。

 現時点ではまだ基礎研究段階ですが、製品開発が進みましたら最終的には薬事承認まで持っていきたいと考えております。

 採択にあたりまして、学術研究推進機構産業連携研究推進委員会の審査委員の先生方に深謝いたします。また、普段より温かく私の臨床業務と基礎研究を見守ってくださっております大鳥精司教授、脊椎脊髄班のメンバーに厚く御礼申し上げます。今後ともご指導、ご鞭撻の程何卒宜しくお願い申し上げます。