頚椎人工椎間板置換術について

更新日 2018.9.22

千葉大学大学院医学研究院整形外科学 大鳥精司 古矢丈雄
筑波大学医学医療系整形外科 山崎正志 國府田正雄

これまで本邦では、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアなどの頚椎変性疾患に伴う神経障害に対して、前方除圧固定術や後方からの除圧術が行われてきました。

 

前方除圧固定術は椎間板ヘルニアや骨棘(骨のとげ)等、神経を圧迫する病変が主に前方部分に存在する場合に適応となります。椎間板および神経の圧迫を取り除き、障害部位の動きを止めることで神経症状の改善が見込まれます。一方で、前方固定術は椎間本来の可動性を犠牲にするという欠点に加え、固定部の隣の椎間での障害が新たに発生しやすくなるという問題があります。

 

それに対し、人工椎間板置換術は、椎間板を摘出した後に可動性を有するインプラントを設置する手術手技です。神経組織への圧迫を取り除いた後に、固定はせずに本来の椎間の可動性を保ちます。罹患椎間の可動性を温存することにより隣接する椎間への負担を減らし、新たな障害発生を防ぐ目的で開発されました。頚椎人工椎間板は既に欧米、アジア諸国で広く承認されており、患者さんの治療に使われてきております。

 

平成29年に本邦で頚椎人工椎間板置換術が承認され、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症に対して実施することが可能となりました。承認に際し、日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄外科学会合同で適正使用基準を作成し、市販後調査期間中(使用開始から約1年間)はプロクター施設のみで施行可能となっております。

 

千葉大学医学部附属病院整形外科はメドトロニック社製のPrestige LP®のプロクター施設、筑波大学医学部附属病院整形外科はPrestige LP®およびジンマーバイオメット社製のMobi-C®のプロクター施設に指定されており、頚椎の人工椎間板手術を行う事ができます。

 

現在、薬物療法や物理療法等の保存療法を施行しているにも関わらず、症状が遷延している頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症の患者様で、人工椎間板置換術にご興味があります方がおられましたら、是非、現在かかられております先生にご相談いただければと思います。かかりつけの先生におかれましては、人工椎間板置換術の適応と思われる患者様がいらっしゃる際はご連絡をいただければと思います。

 

お問い合わせ先:              

千葉大学医学部附属病院整形外科脊椎脊髄外来

火曜日 古矢丈雄 043-222-7171 (代表)

 

筑波大学附属病院整形外科脊椎初診外来

月曜日 國府田正雄 029-853-3900 (代表)