千葉大学整形外科学教室

更新日:2017/04/07(Fri)
診療・研究グループ

足の外科外来

 足の外来は足部、足関節の疾患を対象に毎週火曜日に診療を行っています。山口智志(国際教養学部准教授)を中心に数名の医師で診療に当たっていますが、第2、4火曜日には関連病院の医師も参加しております。
 足は立位、歩行でヒトと地球をつなぐ唯一の運動器であり非常に重要ですが、足の疾患はとかく軽視されがちです。しかし、日本人の生活様式の変化に伴って足の疾患は増加しています。対象となる疾患は非常に多彩で、変形性関節症などの変性疾患や外反母趾、扁平足、外傷、麻痺性疾患などによる足部変形や機能障害、足関節靭帯損傷や腓骨筋腱脱臼、疲労骨折などのスポーツ障害、関節リウマチなどの炎症性疾患などの治療を行っています。
 足部、足関節疾患の治療では、手術療法と靴やインソールを含めた装具による保存療法が等しく重要です。年齢や性別に加え、活動度や生活習慣、スポーツ、職業などを考慮して、患者さまの生活の質を向上させるために最も適切な治療法を選択することが重要です。患者様とよく話し合い、丁寧な診療を心がけております。
 手術は関節固定術や外反母趾矯正術、スポーツ障害に対する手術治療まで様々な手術を行っております。また、症例によっては関節鏡を用いた低侵襲な手術を積極的に行っています。保存療法では、外来と並行して足の装具の外来も行っており、装具の作成や調整がすぐに行える体制となっております。

主な足部、足関節の病気

1.足部、足関節の仕組みと働き

2.装具療法と手術療法

3.足部、足関節の病気と治療

1)足の変形
外反母趾
屈趾症
偏平足
その他の足部変形
2)変形性関節症
変形性足関節症
強剛母趾
3)種子骨、副骨による障害
母趾種子骨障害
外脛骨障害
三角骨障害
Os subfibulare
4)スポーツ外傷、障害
足関節外側靭帯損傷
腓骨筋腱脱臼
距骨骨軟骨損傷
疲労骨折
アキレス腱断裂
5)足根骨癒合症
6)腱付着部症
アキレス腱付着部症
足底腱膜炎
7)関節リウマチ
8)神経の疾患
モートン病
足根管症候群
9)骨折、脱臼

山口 智志 千葉大学国際教養学部 准教授
  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本体育協会公認スポーツドクター
  • 日本整形外科学会認定スポーツ医
  • 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
  • ロコモチャレンジ推進協議会委員(https://locomo-joa.jp/
  • 千葉県体育協会スポーツ医事・科学研究委員会委員
  • 千葉県サッカー協会スポーツ医学委員会委員
  • 2003~2006 千葉県国体サッカー少年男子ドクター
  • 2003~2006 U16/U18サッカー日本代表ドクター
  • Journal of Orthopedic Science Editorial Board Member
中川 量介 医師
  • 日本整形外科学会専門医
木村 青児 医師
  • 日本整形外科学会専門医
貞升 彩 医師
  • 日本整形外科学会専門医
  • 2012~ 千葉県国体サッカー女子ドクター
  • 2012~ 関東大学サッカー連盟医事委員
  • 2014~ ユニバ―シアード女子サッカー日本代表ドクター
  • 2015 AFC girls中国大会エリート女子帯同

診察時間

毎週火曜日 午後 1:00~
 仕事や日常生活でよく使われている靴を履いてお越しいただくか、または何足かお持ちいただくと助かります。

お問い合わせ

千葉大学医学部附属病院 整形外科外来
TEL : 043-222-7171(代表)

足の外科グループの研究会

  • 症例カンファレンス、抄読会(毎週)
  • 千葉足の外科研究会(症例検討を中心とした研究会、年数回)




疾患説明

1.足部、足関節の仕組みと働き
図1 正面
図1 側面
図1 足のレントゲン写真
図2 足のアーチ
図2 足のアーチ
 足部、足関節は脛骨、腓骨というすねの骨に加え、約26個の足部の骨、さらにいくつかの種子骨や副骨という骨でできています(図1)。これらの骨を多くの筋、腱や靭帯が支えており、全体として足のアーチを形成しています。足のアーチは他の動物にはなく、二足直立歩行をするヒト特有の構造です。内側、外側の2つの縦アーチに加えて横アーチがあり(図2)、歩行時にバネとして働き、衝撃を吸収し、体重移動を円滑にする働きがあります。
 アーチを形成する骨や筋腱、靭帯などの異常によりアーチ構造が破綻すると、扁平足をはじめとする足部疾患を生じます。症状は疲れやすい、歩きにくいといったものから足の痛みまで様々です。足の裏にできるタコの多くは、このようなアーチの破綻により荷重が一部に集中するために生じます。

2.装具療法と手術療法
 整形外科の病気の治療は、大きく分けて手術療法とそれ以外の保存療法に分けられますが、足部、足関節の病気の治療においては、どちらも等しく重要です。
 保存療法には様々なものがありますが、その中でも靴や靴の中敷き(インソール)は最も重要です。足のアーチの保持や変形の矯正、荷重を分散させる、などの効果があります。インソールは専門の技師装具士が足型をとって作成します。足の3つのアーチを支えるアーチサポートが基本的な形ですが(図3)、疾患や用途などによって素材や硬さ、形状を調整します。靴は、市販のものを多くの種類、足幅で揃えています。ほとんどの場合はこれらで対応が可能ですが、足の変形が強く市販の靴が履けない場合には、足型をとってオーダーメイドの靴(靴型装具)を作ることもあります(図4)。足関節の変形などに対する短下肢装具などの装具も必要に応じ作成しています。靴や装具は繰り返しの調整が必要なことも多く、その都度、迅速に修正できる体制となっています。
 手術療法は、外反母趾などの足部変形に対する矯正骨切り術や、足関節の靭帯再建など様々な手術を行っています。外傷など早期の治療が必要な症例に対しても対応させていただきます。
 疾患によっては、関節鏡を使ってより傷が小さく、術後の回復が早い方法で行います。近年、足部、足関節の関節鏡(内視鏡)は急速に進歩しています。当院でも、様々な部位の関節鏡を行い、診断、治療に役立てています(図5)。


図3 インソール
図3 インソール(靴の中敷き)
図4 靴型装具
図4 靴型装具

図5 足関節鏡を行う部位
図5 足関節鏡を行う部位

3.足部、足関節の病気と治療
図6 股関節のレントゲン写真
図6 股関節のレントゲン写真
 足部、足関節は多くの骨と関節、筋肉より成っているため、非常に多くの種類の疾患があります。例えば、2つの骨と1つの関節より成る股関節(図6)と比べると違いがよくわかります。このため、病気の診断が難しいことがあります。また、体重全体を小さな骨と関節で支えているため、わずかな異常が頑固な痛みや日常生活上の不便につながることがあります。足の痛みが長期間続いているときは、整形外科や足の専門外来の受診を考慮してもよいかもしれません。
1)足の変形
【外反母趾】
 母趾(足の親指)が外側に曲がってしまう疾患です。足部疾患の中で最も多いもののひとつであり、生活様式の西欧化に伴い、頻度が増えています。女性の患者様がほとんどで、ハイヒールや先の狭い靴が大きな原因のひとつとされています。

症状:母趾の外反に伴って母趾の付け根(MTP関節)が内側に出っ張り、靴に当たって炎症や痛みを生じます(図7)。また第2趾や3趾の付け根、足の裏側に痛みを伴うタコができることもあります。変形が進行すると母趾が隣の第2趾に重なったり、第2趾の脱臼を起こすことがあります。関節リウマチでも同様の変形をおこすことがあります。

診断:外見のみでほぼ診断は可能ですが、レントゲン撮影で正確な曲がりの角度を計測します(図8a)。

治療:保存療法と手術療法に分けられます。保存療法は、靴の指導や作成、インソールの作成などの治療を行います。痛みの改善には有効です。変形が軽度の場合は足趾の体操も進行の予防が期待できます。保存療法を行っても痛みが改善しない場合には、骨を切って変形を矯正する手術を行います(図8b)。変形の程度や合併病変などを考慮して、いくつかの術式を使い分けています。
図7 外反母趾
図7 外反母趾
図8 外反母趾のレントゲン写真

図8 外反母趾のレントゲン写真 図8 外反母趾のレントゲン写真
【屈趾症】
 様々な原因で足趾が曲がってしまい、伸びなくなる病気です(図9)。手術が必要なほどの強い屈趾は、すねや足の外傷の後に起こる場合や、神経の病気が原因のことが多いようです。また、外反母趾に合併したり、ハイヒールや趾先の狭い靴が原因でおこることもあります。

症状:歩行時に趾先が地面に当たって痛かったり、靴を履いたときに当たって痛かったり、といった症状がでます。足趾の付け根の裏に痛みが出ることもあります。長期間の負担により、これらの場所にタコ(胼胝)ができ、さらに痛みが強くなります(図10)。

診断:外観でおおむね診断が可能ですが、レントゲン写真で変形の程度を確認します。また、原因となる疾患をチェックするために、神経内科などの受診や様々な検査が必要なこともあります。

治療:変形が軽いものには、タコの部分に柔らかいクッションをあてたり、趾先が広い靴や靴の中敷きで負担を減らし、足趾に靴が当たらないようにします。また、拘縮予防のために足趾のストレッチを行います。これらの治療で改善しない場合や変形が強い場合には、手術が必要になります。関節の骨を一部切除したり、変形の原因となっている腱を切ったり伸ばしたりして、変形の矯正をします。
図9 屈趾
図9 屈趾
図10 タコ(胼胝)
図10 タコ(胼胝)
【扁平足】
 足の内側アーチが低下し、土踏まずが消失したものを扁平足といい、それに伴う症状を呈する状態が扁平足障害です。実際には土踏まずの低下だけでなく、踵が外側に傾いたり、つま先が外側に向く変形を伴うことが多いです(図11)。小児期、思春期、成人期に分けられ、原因は様々ですが、小児では先天性(生まれつき)、思春期では外脛骨(後述)や足根骨癒合症といった疾患を伴うもの、成人では関節リウマチやアーチを支える腱の変性(後脛骨筋機能不全)などがあります。

図11 偏平足
図11 偏平足
症状:小児では変形があるものの、扁平足のみでは症状がない場合がほとんどです。思春期では、スポーツ等で活動性が上がるのにあわせて足に痛みがでる場合が多いようです。成人では足首の内側から足の裏にかけての痛みや腫れで発症します(後脛骨筋機能不全)。

診断:外観でおおむね可能です。レントゲン写真などで原因となる疾患のチェックや、変形の程度を確認します。

図12 扁平足のレントゲン写真
図12 扁平足のレントゲン写真
治療:まず保存療法を行い、それでも症状が改善しない場合に手術を行います。保存療法は、足アーチを維持する靭帯や腱への負担を軽減する目的でインソールや靴の作成、リハビリ等を行います。小児期では、特別な疾患がある場合を除いて手術を行うことは稀です。思春期では外脛骨(後述)や足根骨癒合症(後述)などが痛みの原因となっている場合には手術の適応となります。成人期では、保存療法を行っても痛みが改善しない場合には手術を行います。変形の程度などを考慮して、いくつかの術式を使い分けています(図12)。手術方法としては滑膜切除術、腱移行術、骨切り術などがあります。
【その他の足部変形】
 足関節周囲の筋力や筋緊張のバランスが崩れることや、外傷後に不適切な姿勢で長期間足を固定してしまうことなどで生じます。原因は先天性疾患、脊髄疾患、腫瘍、外傷など神経や筋肉の障害を起こす様々なものがあり、それぞれ変形の程度や形態が異なります。足関節が下に反ったまま上に反らせることができなくなった状態(尖足)や、足が内側に変形している状態(内反足)などがあります。足趾の変形(屈趾症)を伴うこともあります。

図13 尖足のレントゲン写真
図13 尖足のレントゲン写真
症状:足の裏に均等に体重がかからないために歩きづらいこと、足の裏や靴の中で局所的に負荷のかかる部分にタコや潰瘍ができて痛いことが問題となります。変形が強い場合には足の裏が地面につかないこともあります。

診断:外見から変形そのものの診断は可能ですが、同時に原因となっている疾患の検索が必要です。また、レントゲン撮影で骨の形態や位置関係を確認します。

治療:発症年齢や変形のもととなる原因などによって治療方針が異なりますが、基本的にはまずリハビリテーションや装具治療により変形の発生や拘縮の予防を行います。保存療法が限界と考えられた場合、骨を切ったり腱の場所を動かすことにより変形を矯正する手術を行います(図13)。変形の形態や程度に応じて様々な術式を組み合わせて行いますが、手術によってもともとの筋力や機能を犠牲にせざるをえないことや、長期的に複数回の手術が必要になることがあります。
2)変形性関節症
 変形性足関節症は、足首の変形性関節症です。膝関節や股関節に比べると頻度は低いとされています。繰り返す捻挫や足関節の骨折などのけがの後に生じることが多いですが、明らかな原因がない事もあります。
【変形性足関節症】
変形性足関節症は、足首の変形性関節症です。膝関節や股関節に比べると頻度は低いとされています。繰り返す捻挫の後や足関節の骨折などの外傷後に生じることが多いですが、明らかな原因がない事もあります。

症状:初期症状は歩き始めの痛みや長時間歩いた後の痛みが多いですが、徐々に足関節の腫れが出現し、足関節の動きの制限も生じます。
診断:上記の症状や、単純レントゲンで診断が可能です。症状に応じてMRIやCTなどの検査を行います。外傷歴などの問診も重要です。

治療:保存療法では、インソールの作成やサポーター、靴型装具などを使用します。また、症状に応じて消炎鎮痛剤の外用や内服を行います。保存療法で痛みが改善しない場合は手術を行います。手術は、関節破壊の程度や患者さんの状況に合わせて、脛骨の骨切り術や足関節を固定する手術などを行います(図14)。原因となる足関節の不安定性などがあれば、その治療(靭帯再建術など)を行うこともあります。症例に応じて関節鏡を使って傷の小さい手術を行っています(図15)。

図14 変形性足関節症のレントゲン写真
図14 変形性足関節症のレントゲン写真
図15 変形性足関節症の関節鏡写真
図15 変形性足関節症の関節鏡写真
【強剛母趾】
図16 強剛母趾
図16 強剛母趾のレントゲン写真
 母趾の付け根の関節(MTP関節)の変形性関節症を強剛母趾と呼びます。原因は外傷や靴の影響、肥満などが挙げられますが、分からないことが多いです。

症状:歩行時のMTP関節部の痛みです。徐々に母趾を上に反らすこと(背屈)が難しくなるため、踏み返しでの痛みが強くなります。また、関節の腫れや圧痛も伴います。

診断:上記の症状に加え、単純レントゲンで診断します(図16)。単純レントゲンにより、余分にできた骨(骨棘)の程度や軟骨の痛みの程度なども判断します。

治療:保存療法は、初期には痛み止めの外用や内服を行います。また、踏み返し時の痛みを軽減する目的で関節の動きを制動するようなインソールなどを使用します。手術は、変形の程度や患者さんの状況に合わせて、骨棘を切除したり、関節を固定する手術などを行います。

3)種子骨、副骨による障害
種子骨は腱の中にある小さな骨で、足の裏の圧の吸収や、腱の動きを滑らかにする働きがあります。副骨は成長の過程で癒合すべき部分が癒合せずに残ったり、骨折が癒合せずに残ってしまったために生じる小さな骨です。足には多くの種子骨や副骨があり、痛みの原因となることがあります。青年期のスポーツ選手で生じることが多いようです。
【母趾種子骨障害】
 母趾MTP関節の足底側にある小さい骨が母趾種子骨です。この骨の骨折、壊死、炎症などの原因で痛くなるのが母趾種子骨障害です。

症状:歩行時の母趾MTP関節の痛みや圧痛、母趾を反らしたとき(背屈)の痛みがあります。

診断:レントゲンで異常を発見できるものもありますが、できないものはCTやMRIが有用です(図17)。

治療:基本的には安静や消炎鎮痛剤、ステロイドの注射、インソールなどの保存療法で改善します。保存療法で改善しないものには種子骨を摘出する手術を行います。

図17 母趾種子骨障害のMRI
図17 母趾種子骨障害のMRI
【外脛骨障害】
図18 外脛骨
図18 外脛骨のレントゲン写真
 舟状骨の副骨で、最も多い副骨障害です。舟状骨は内くるぶし(足関節内果)の内下方にある骨です。多くは無症状ですが、運動のしすぎや足関節の捻挫•打撲をきっかけとして症状が出ることがあります。スポーツ活動が盛んな思春期に多くみられます。

症状:足の内側に出っ張りがあり、運動時に痛みがあります。靴が当たったり、ボールをけるときに当たって痛むこともあります。

診断:外観上、出っ張ってていることが多く、レントゲンでも発見は容易です(図18)。扁平足を伴うこともあります。

治療:年齢や症状の程度、スポーツレベル等を考慮し決めます。大部分はインソールなどの保存療法で改善しますが、よくならない場合には手術を行います。手術は外脛骨の摘出を行いますが、扁平足を合併している場合には、その矯正手術を同時に行うこともあります。
【三角骨障害】
図19 三角骨
図19 三角骨のレントゲン写真
三角骨は足関節の後方に位置する副骨で、これによって痛みを呈するものが三角骨障害です。足関節を下に反る(底屈)ことが多いクラシックバレエやサッカーをやっている方に多い障害です。

症状:典型的には走るときやサッカーのインステップキック、クラシックバレエのポアントの姿勢で足関節の後方に痛みがあります。足関節底屈時に疼痛を認め、圧痛もあります。

診断:上記の症状に加え、レントゲンで容易に発見できます(図19)。CT、MRIを撮ることでさらに詳細が分かります。

治療:注射やテーピングなどの保存療法を行い、改善しないものや早期スポーツ復帰を希望される方に手術を行います。手術は三角骨を摘出しますが、当院では内視鏡手術で行っており、術後の回復が早くなっています(図20)。
図20 三角骨の関節鏡写真
図20 三角骨の関節鏡写真
【Os subfibulare】
図21 Os subfibulare
図21 Os subfibulare
外くるぶし(足関節外果)の下にある副骨です。ほとんどは小児期の足関節捻挫の際の裂離骨折が原因といわれています。

症状:運動時に外くるぶしに痛みや圧痛がみられます。足関節の捻挫を繰り返していることが多く、足関節が不安定性な場合もあります。

診断:レントゲンで骨片がみられる為、診断は容易です(図21)。CT、MRIで詳細が分かります。また、不安定性がある場合はストレスレントゲン撮影を行います。

治療:まず保存療法を行い、症状が改善しない場合には手術を検討します。保存療法は病変部に負担がかからないようにサポーター、テーピング、リハビリによる筋力強化などを行います。手術は骨片の摘出と外側靭帯の修復を行います。

4)スポーツ外傷、障害
【足関節外側靭帯損傷】
図22 ストレスレントゲン写真
図22 ストレスレントゲン写真
 靭帯とは骨と骨をつないで関節を支えているすじのことで、これを損傷するのが捻挫、靭帯損傷です。足関節の捻挫は非常に頻度の多い外傷で、足首を内側に捻って外側の靭帯を損傷することが最も多いです。

症状:新鮮例では、典型的には外くるぶし(外果)の腫れや痛みがあります。重度の捻挫では体重をかけることができなくなります。陳旧例では日常生活やスポーツでの不安定感や痛み、腫れがあり、また捻挫を繰り返すことがあります。

診断:新鮮例では受傷状況や腫れ、痛みの部位などから概ね診断可能です。捻挫に伴って骨折を起こしている場合があるのでレントゲン検査が必要です。陳旧例で、不安定感が残ったり捻挫を繰り返している場合には靭帯の状態や骨軟骨損傷(後述)の有無をみるためにMRI検査を行ったり、不安定性を評価するためにストレスレントゲン撮影(図22)を行ったりします。当院では、3DMRIという特別なMRI撮像法で、靭帯の詳細な状態を評価しています(図23)。
図23 3DMRIによる靭帯評価
図23 3DMRIによる靭帯評価
治療:新鮮外側靭帯損傷の多くは保存治療にて良好に治癒します。重症度に応じてギプス固定やサポーター固定を行います。小児の場合、小さな骨折を起こしていることが多く、症状が軽くてもギプス固定を行うことがあります。再発の予防には足関節周囲の筋力訓練やバランス訓練などのリハビリが重要です。陳旧例で痛みや不安定感が残り、日常生活やスポーツ活動に支障がある場合には靭帯を修復したり、再建する手術を行います。残存する靭帯の状態によっていくつかの術式を使い分けています。 症例によっては、関節鏡を使った創の小さい手術を行っています(図24)。
図24 外側靭帯損傷の関節鏡写真
図24 外側靭帯損傷の関節鏡写真
【腓骨筋腱脱臼】
 外くるぶし(外果)の後方を回りこむように走る長腓骨筋という筋肉の腱が外果を乗り越えて前方に脱臼する疾患です。スキーやサッカーなどのスポーツ中に受傷することが多いですが、まれに生まれつきの場合もあります。いったん生じると多くの人で繰り返します。

症状:初回の受傷時には外果部の痛みや腫れ、内出血がみられますが、足関節捻挫との区別が難しいことが多く、診断がつかないことがあります。その後陳旧性となると、日常生活やスポーツで脱臼を起こし、痛みや脱力感、腱が外れる感じ(弾発感)を繰り返します。

診断:腱の脱臼が確認できれば診断は確定します。診断が難しい場合には超音波検査やMRIなどを行います(図25)。
図25 腓骨筋腱脱臼のMRI
図25 腓骨筋腱脱臼のMRI

治療:陳旧性の場合は保存療法が無効なことが多く、手術を行います。腱の周りの骨や軟部組織によって腱が脱臼しないように抑え込む手術を行います(図26)。
図26 腓骨筋腱の関節鏡写真
図26 腓骨筋腱の関節鏡写真
【距骨骨軟骨損傷】
図27 距骨骨軟骨損傷のCT、MRI
図27 距骨骨軟骨損傷のCT、MRI
足関節を構成する距骨の軟骨と骨が痛んだ状態です。多くは繰り返しの捻挫により生じますが、外傷歴のはっきりしない場合もあります。

症状:受傷時には足関節の腫れや疼痛、ひっかかり感などがありますが、足関節外側靭帯損傷を伴っていることも多く、どちらの痛みかわかりにくいことがあります。長期経過した場合では長時間の立ち仕事や運動で足関節の腫れと痛みがありますが、多くは安静により症状は改善します。

診断:足関節捻挫の後に痛みがひかない場合、レントゲンの再検査やCT、MRIなどで診断します(図27)。ストレスレントゲン撮影によって足関節の不安定性も評価します。

治療:特に経過が長い場合は、ギプス固定をして体重をかけないようにする保存療法では効果がない場合が多く、手術が必要になります。手術は主に関節鏡で行いますが、年齢や活動性、病変部の大きさ・状態などに応じいろいろな術式を選択します(図28)。
図28 距骨骨軟骨損傷の関節鏡写真
図28 距骨骨軟骨損傷の関節鏡写真
【疲労骨折】
 スポーツなどで、繰り返しの負荷がかかり続けることにより骨折を起こすのが疲労骨折です。活動性の高い中高生やスポーツ選手に起こることが大半ですが、小学生や中高年でも足に負担がかかり生じることがあります。様々な部位に生じますが、第五中足骨(Jones骨折)と舟状骨の疲労骨折などは、治療に時間がかかり、また手術が必要になることが多いです。サッカーやバスケットボール、陸上などで多い骨折です。

症状:初期は運動時や運動後に痛む程度ですが、進行すると日常生活でも痛むようになります。骨折部の腫れを伴うこともあります。完全な骨折に至った時には、急に痛みがひどくなることがあります。

診断:初期は、レントゲンで骨折がわからないことが多く、診断にMRIやCTが必要となります。完全な骨折に至ったり、骨折が治り始めてくると、初めてレントゲンで骨折がわかるようになります。

治療:多くの疲労骨折は安静のみで治癒しますが、第五中足骨(Jones骨折)や舟状骨の疲労骨折など難治性ものは、早期スポーツ復帰のために手術を選択します(図29)。
図29 舟状骨の疲労骨折のCT、レントゲン写真
図29 舟状骨の疲労骨折のCT、レントゲン写真
【アキレス腱断裂】
ふくらはぎと踵をつなぐ腱がアキレス腱です。8割はスポーツによる受傷ですが、40歳代に最も多く、年齢による腱のいたみ(変性)も原因の一つです。ありふれた病気のわりには、初診時に正しく診断されなったり、病院を受診せず放置したりして陳旧性になることが多く、注意が必要です。

症状:受傷時には、周りの人にも聞こえるような音とともに、「後ろから踵をたたかれた感じ」があるのが典型的です。陳旧性になると、足の力が入りにくくなるため、爪先立ちなどができなくなります。

診断:新鮮例では、診察だけでほぼ診断が可能です。超音波検査では、断裂部を画像で確認することができます(図30)。陳旧性の場合には、診察で診断がつかないこともあるため、MRIで断裂部を確認します(図31)。

治療:新鮮例では、ギプスや装具による保存治療と手術で断裂した腱を縫合する治療のどちらも選択できます。陳旧例の場合は、日常生活に支障がなければ放置しても差し支えありませんが、筋力を回復させるには手術が必要です。腱の欠損の大きさにより、様々な手術法を使い分けます。
図30 超音波検査
図30 超音波検査
図31 MRI
図31 MRI
5)足根骨癒合症
 生まれつき、足の二つの骨が癒合している病気です。骨同志が完全にくっついているわけではなく、線維のような組織で不完全につながっている状態のことがほとんどです。距骨と踵骨が癒合した距踵間癒合症と、踵骨と舟状骨が癒合した踵舟間癒合症が多いですが、その他にも様々な骨で生じます。また、特に痛みがなく、レントゲンでたまたまみつかることもあります(図32)。

症状:スポーツをしているお子さんで、成長して骨が硬くなってくる10歳前後に痛みが出ることが多いです。距踵間癒合症では内くるぶし付近が、踵舟間癒合症では、足の外側が痛くなります。成人になって、癒合して出っ張った骨が神経を圧迫することによって足のしびれが出る(足根管症候群)こともあります。

診断:癒合した部分が大きい場合には、外見上骨の突出がわかり、レントゲンでも診断は容易です。癒合部が小さい場合には、CTやMRIで初めて診断がつくこともあります。

治療:保存療法は、安静や靴のインソールで負荷の軽減を行います。痛みが続いて日常生活やスポーツ活動に支障がある時には、癒合部分を切除する手術を行います(図33)。
図32 距踵間癒合症のレントゲン写真
図32 距踵間癒合症のレントゲン写真
図33 踵舟間癒合症のレントゲン写真
図33 踵舟間癒合症のレントゲン写真
6)腱付着部症
【アキレス腱付着部症】
アキレス腱が踵の骨に付着する部分で炎症が起こり発症します。アキレス腱自体に炎症が起こるアキレス腱実質部症というものもありますが、両者は厳密には区別されます。主な原因としてはスポーツ活動などによる使い過ぎで起こります。比較的若い人にみられ、両側に発症することも多く、スポーツによるものでは陸上競技、特に中・長距離種目に多く発生します。

症状:歩行時、運動時にアキレス腱付着部周囲に痛みを訴えます。同部位に強い圧痛を認めます。後ろから観察するとアキレス腱付着部全体が腫れて厚くなっていることがあります。

診断:アキレス腱付着部周囲に圧痛を認めることから診断は比較的容易に行われます。MRIではアキレス腱周囲が厚くなったり、傷んでいる様子がよくわかります(図34)。

治療:安静、痛み止めの内服やストレッチに加え、インソールを作成し踵の位置を上げることで痛みが緩和されます。それでも改善しない場合は、体外衝撃波治療や、アキレス腱周囲の癒着を剥離する手術を行います。

図34 アキレス腱付着部症のMRI
図34 アキレス腱付着部症のMRI
【足底腱膜炎】
足の裏には、踵の骨から足先にかけて足底腱膜という強靭な線維が走っており、歩行時の衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。スポーツや長年の繰り返しの負担により、足底腱膜の踵の骨に付着部する部分で傷んだり炎症を起こしたりして、痛くなります。長時間の歩行や立ち仕事が原因となるため、中年以降の女性に多い病気です。またジョギング愛好者や陸上の長距離ランナーにも多い病気です。

症状:足の裏、踵の部分が痛くなりますが、朝、起床時の一歩目の痛みが特徴的な症状です。痛みはランニングや歩行の開始時に強く、運動を続けると徐々に軽くなることが多いです。長時間の歩行を続けたり、夕方になると、再度痛みが強くなります。

図35 足底腱膜炎のMRI
図35 足底腱膜炎のMRI
診断:上記の症状と踵の圧痛により、診断は比較的容易です。レントゲンでは踵骨棘という骨のとげを認めることもありますが、とげ自体が痛いわけではなく、レントゲンでは映らない腱膜の痛みです。MRIや超音波検査では、腱膜が厚くなったり、傷んでいる様子がよくわかります(図35)。

治療:8割程度の方は自然に改善しますので、痛みが強くなければ治療をせずに様子をみていても問題ありません。ご自身で簡単にできる治療としては、足底腱膜のストレッチ(図36)が痛みを軽くするのに効果があります。スポーツが原因の場合には、一定期間ランニングなどの制限が必要かもしれません。その他、痛み止めの内服や踵の負担を減らすためのインソールの作成、ステロイドの注射を行います。それでも改善しない場合は、体外衝撃波治療や、足底腱膜を一部切離する手術を行います。

図36 足底腱膜のストレッチ
図36 足底腱膜のストレッチ
7)関節リウマチ
免疫の異常によって、からだの様々な関節に炎症が起きて痛む病気です。30-50歳代の女性に発症することが最もおおい病気で、進行すると関節の変形や破壊がおこります。

症状:全身の関節に痛みや腫れがでる可能性がありますが、足趾の症状で発症することが最も多いとされています。病状が進行すると、足首や足趾の著明な変形に至ることもあります。

診断:発症の初期に診断して治療を開始することが非常に重要なのですが、この時期はレントゲンで異常がなく、診断が困難なことがしばしばあります。診察の所見と採血で診断をしますが、MRIや超音波検査で関節の炎症を見ることも診断に役立ちます。

治療:抗リウマチ薬による薬物治療を行います。その他、痛み止めの内服や関節内注射で関節の炎症を抑えることがあります。足部の変形に対しては、靴やインソールで負荷の軽減を図ります。保存療法の効果がなく、また変形が強い場合には手術を行うことがあります。手術は、痛みのある関節の部位により様々ですが、できるだけ関節の動きを残すような手術を行っています(図37)。

図37 足趾の変形の手術
図37 足趾の変形の手術
8)神経の疾患
【モートン病】
 足趾の間で神経が圧迫されることにより生じる神経の障害です。第3趾と4趾の間の神経が圧迫されることが最も多く、中年以降の女性に多い病気です。近年、日本でも靴の着用時間が長くなり患者様が増えてきています。

症状:歩行時や爪先立ちをした時の、足趾や足趾の付け根の痛み、しびれです。ひどくなると、安静にしている時にも痛みがでることがあります。

診断:上記の症状と、診察(足趾の間を押した時の痛みや、感覚の検査)で診断をします。また、障害された神経がコブのように大きくなり(神経腫)、MRIで見えることがあります(図38)。似たような痛みをおこす病気が他にもたくさんあるため、注意が必要です。

治療:多くは手術をしないでも痛みが改善します。足の負担を減らすための靴やインソールの作成、ブロック注射、痛み止めの内服などの治療を行います。これらで改善しない場合は、神経の切除などの手術療法を行うことがあります。手術をしても痛みが残る場合もあるため、注意が必要です。
図38 モートン病のMRI
図38 モートン病のMRI
【足根管症候群】
 足首、内くるぶしの少し下の部分には、足根管という骨と靭帯にかこまれたトンネル状のスペースがあります。その中に通っている神経が圧迫されて発生する神経の障害が、足根管症候群です。しこり(ガングリオン)や骨の出っ張り(足根骨癒合症)による神経の圧迫が原因のこと多いですが、はっきりした原因がないこともあります。

症状:足首の内側から足の裏、足趾にかけてのしびれや痛みです。歩行や運動をした時の痛みが主ですが、入浴時、夜間などにも痛みがでることがあります。

診断:上記の症状に加え、足根管部分を軽くたたくと症状が誘発される現象(Tinel様徴候)が診断に有用です。超音波検査やMRIで、足根管内のガングリオンなどの有無を調べます(図39)。また、電気生理学的検査という方法で、神経の障害を検査します。腰の病気による坐骨神経痛など、似たような症状を起こす病気があるため、鑑別のため様々な検査を行います。

治療:安静、痛み止めの内服やステロイドの足根管内への注射が効果的です。扁平足がある場合にはインソールや装具を使用することもあります。手術は、占拠性病変の切除を行います。占拠性病変が神経圧迫の原因となっている場合には、早めに手術を考慮してもよいかもしれません。
図39 足根管内のガングリオンのMRI
図39 足根管内のガングリオンのMRI
9)骨折、脱臼
 足部、足関節の骨折はたくさんの小さな骨が複雑に積み重なってできています。そのため、骨折や脱臼の診断が難しいことがしばしばあります。また、小さな骨に全体重が集中するため、骨折や脱臼の後、わずかな関節のずれが頑固な痛みを残すことがあります。

症状:大きなけがの場合には、強い痛みや腫れがでるので骨折や脱臼を疑うことは容易です。一方、けがの直後に痛みや腫れがそれほど強くない場合でも損傷があることがあるため、注意が必要です。

診断:上記の症状に加え、レントゲンやCT、MRI、超音波検査など様々な画像検査で損傷を診断します。わずかな損傷を診断するために、けがをしていない方の足の画像も撮影して比較することにより、はじめて損傷が診断できることもあります(図40)。

治療:けがをした直後の場合は、ギプスなどで足を固定して骨が癒合するのを待つ治療か、手術をしてずれた骨、関節を戻し、固定する方法があります(図41)。時間がたって骨折を元に戻すのが難しい場合には、いたんだ関節を固定する手術(関節固定術)を行うこともあります。

図40 リスフラン靭帯損傷のレントゲン
図40 リスフラン靭帯損傷のレントゲン
図41 様々な部位の骨折の手術
図41 様々な部位の骨折の手術