千葉大学整形外科学教室

更新日:2017/06/08(Thu)
診療・研究グループ

スポーツ・膝関節外来

 スポーツ・膝関節外来は佐粧孝久千葉大学予防医学センター教授、赤木龍一郎助教を中心に9名の医師で診療にあたっております。千葉県内の施設はもとより関東一円から多数の紹介患者様を受け入れ、こどもからプロスポーツ選手まで老若男女問わず数多くの専門的な治療実績があります。
 外来診察時間は毎週水曜日および金曜日の午後1時から4時となっております。初めて受診される患者様は予約制ではありませんので紹介状を持参の上、12時半頃までにご来院下さい。水曜日、金曜日とも新患での受診は可能ですがお急ぎでなければ金曜日に受診していただくことをおすすめしています。
 当グループでは、スポーツ外傷や事故に伴う靭帯損傷、軟骨損傷といった膝のケガから、軟骨がすり減ってしまう変形性膝関節症や骨壊死、膝関節周辺の腫瘍まで幅広く膝関節に生じる疾患の診断、治療を行っています。さらに、膝関節のみならず足関節・足部のスポーツ障害に対しても治療を行っています(足のその他の疾患は火曜日の足の外科外来で主に診療しています)。患者様の膝の状態を詳しく調べ、個々の生活スタイルやご希望を踏まえて、靭帯再建術や軟骨修復術、自家培養軟骨移植といった最先端治療、また骨切り術や人工膝関節置換術まであらゆる方法を検討した上で最適な治療法をご相談し選択しています。

主な疾患

膝関節スポーツ外傷

前十字靭帯損傷
半月板損傷
軟骨損傷
医師紹介
佐粧 孝久 千葉大学予防医学センター 教授
  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本リウマチ学会認定医
  • 日本体育協会公認スポーツドクター
  • 日本整形外科学会認定スポーツ医
山口 智志 千葉大学国際教養学部 准教授
  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本体育協会公認スポーツドクター
  • 日本整形外科学会認定スポーツ医
  • 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
  • 千葉県体育協会スポーツ医事・科学研究委員会委員
  • 千葉県サッカー協会医学委員
  • 2003~2006 千葉県国体サッカー少年男子ドクター
  • 2003~2006 U16/U18サッカー日本代表ドクター
  • Journal of Orthopedic Science Editorial Board Member
赤木龍一郎 助教
  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本体育協会公認スポーツドクター
  • 日本整形外科学会認定スポーツ医
  • 千葉県サッカー協会医学委員
  • IOC Diploma in Sports Medicine (with distinction)
  • 2010~2012 フットサル日本代表ドクター
  • 2015 U23女子サッカー日本代表 ラ・マンガ国際大会帯同ドクター
  • 2016 U-17/U-18サッカー日本代表ドクター
榎本 隆宏 医師
  • 日本整形外科学会専門医
佐藤 祐介 医師
  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本体育協会公認スポーツドクター
中川 量介 医師
  • 日本整形外科学会専門医
木村 青児 医師
  • 日本整形外科学会会員
小川 裕也 医師
  • 日本整形外科学会専門医
貞升 彩 医師
  • 日本整形外科学会会員
  • 2012~ 千葉県国体サッカー女子ドクター
  • 2012~ 関東大学サッカー連盟医事委員
  • 2014~ ユニバ―シアード女子サッカー日本代表ドクター
  • 2015 AFC girls中国大会エリート女子帯同
診察時間
水・金曜日 午後1時~
お問い合わせ
千葉大学医学部附属病院 整形外科外来
TEL : 043-222-7171(代表)






膝関節スポーツ外傷

 膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament: ACL)損傷はスポーツによる膝のケガの中でも頻度が高く、一般人口では年間10000人に約4例が受傷すると報告されています。ジャンプの着地や急な方向転換など、人と接触しない減速動作中に膝をひねって損傷することが多くみられます。前十字靭帯は膝関節の中で太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間を連結し、脛骨が前方にずれるのを防いで安定化する機能があります。損傷するとこの機能が失われ、膝関節が不安定となります。この不安定性を放置したままスポーツなど負担の大きい活動を行うと、すねの骨が前にずれて膝くずれを生じる原因となり、思い切ってスポーツ活動ができなくなってしまうことがあります。また膝くずれを繰り返すことにより、膝関節の中でクッションの役割を果たす軟骨や半月板の二次損傷をひきおこす危険性が高まり、長期的に膝の軟骨がすり減って失われ、骨まで変形してしまう(変形性膝関節症)こともあります。

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  正常な前十字靭帯
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  断裂した前十字靭帯
【前十字靭帯損傷の治療方針】
 前十字靭帯は切れてしまうと自然に治癒することはまずありません。活動性のあまり高くない、特に中高年以上の方では膝の筋力を強化するリハビリテーションを行うことで日常生活に支障なく戻ることができる場合もありますが、スポーツや活動性の高い業務への復帰を目指す方、また日常生活でも膝くずれを繰り返す方では機能障害の改善のために靭帯を作り替える手術的治療(靭帯再建術)をお薦めしています。手術により70-80%の症例が受傷前のスポーツレベルまで復帰できるとされています。

【前十字靭帯再建術】
 再建術とは、損傷した靭帯の機能を再現するために太ももの骨とすねの骨を代わりのもので連結する手術です。当院では、関節鏡を用いて最小限の傷で、靭帯の代わりの材料としてご自分の太ももの裏の筋肉(ハムストリング)の腱を移植腱として用いる再建術を行っております。ハムストリング腱を用いた膝前十字靭帯再建術は、腱を採取することによる術後の悪影響があまりなく、国内外で多く行われている術式です。二度目の断裂などのケースでは膝のお皿(膝蓋骨)の下の腱(膝蓋腱)を用いることもあります。
 前十字靭帯は一本の靭帯ですが、内部では膝を安定化する機能が若干異なる二本の線維の束で構成されています。この二本の線維束の機能をできるだけ再現し回復させるために、当院では二束再建術を行っています。太ももの骨、すねの骨ともに二つずつ孔(骨トンネル)を開け、二本の移植腱をそれぞれ別の骨トンネル内に通す方法です。これにより、前述の二本の線維束を再建しています。二束再建は前十字靭帯を一本の再建靭帯で作りなおす一束再建と比べ膝の捻りに対する安定性が増すことが期待できます。
 また当院の手術の特長として、骨トンネルに通過させた移植腱を体に固定する方法として、長さが調整できる紐(人工靭帯)を用いています。この新しい紐を用いることで、再建靭帯をより強固に骨トンネルに固定することができます。これによって、再建靭帯が自分の体の中でより早く安定化することが期待できます。さらに、人工靭帯の端は薄い金属製のボタンに固定されているため、手術後に体の中の固定材料が出っ張って気になることがまずありません。

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  手術で再建した前十字靭帯
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  術後X線写真
【手術後のリハビリテーション】
 手術の後は関節の可動域や筋力を回復させ、もとの生活やスポーツに復帰するためにリハビリテーションが必要になります。
 入院期間は約10日です。入院中に、手術の翌日から膝の可動域訓練や筋力訓練、松葉杖での歩行訓練を開始します。前十字靭帯の再建と同時に半月板の縫合を行ったかどうかでリハビリの経過は若干異なりますが、術後3〜4週間は松葉杖歩行となります。退院後は通常はご近所あるいは連携しているクリニックや病院などで通院リハビリテーションを行っていただきます。手術後最初の3〜4ヶ月は膝の曲げ伸ばしを行う可動域訓練と筋力訓練が中心になります。もともとの活動性や競技レベル、可動域や筋力の回復の速度などでかなり個人差がありますが、だいたいの目安としては術後約3〜4ヶ月でジョギングが開始でき、ランニングやステップ動作を段階的に確認して術後約6〜8ヶ月からスポーツに関連した動作を開始、スポーツに完全に復帰するまでは8〜12ヶ月程度かかります。
 リハビリを行っている間、および完全に競技復帰できた後も定期的に当科の外来を受診していただき、手術後の膝関節の状態を評価しサポートさせていただきます。

 半月板は膝関節の中で大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある組織で、骨や骨の表面を覆う軟骨にかかるストレスを減らす「クッション」の役割をしています。また、膝の骨同士の動きを安定させる働きもあります。
 スポーツなどで膝を捻ったりして半月板に強い外力がかかると損傷します。前十字靭帯損傷など膝の他の外傷と合併することもあります。また、年齢とともに半月板の弾力性は失われ(これを変性といいます)、一回の大きな外力でなくても少しずつ擦り切れるように損傷することもあります。半月板が損傷すると膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりを感じたりします。ひどい場合には、膝に水(関節液)がたまったり、膝が動かなくなる“ロッキング”という状態になり、歩けなくなるほど痛くなることもあります。

【半月板損傷の診断】
 問診(どうやって受傷したか)、徒手検査、MRIなどを組み合わせて診断します。

【半月板損傷の治療方針】
 治療には保存治療(ヒアルロン酸注射、リハビリテーションなど)と手術治療があります。痛みやひっかかり感といった症状が軽い場合は保存治療が有効であると考えられます。保存治療で症状が改善しない場合、痛みやひっかかり感が強い場合などは手術を考慮します。
 手術は関節鏡を用いて行います。膝蓋骨(膝のお皿)の下に1cm程度の切開を2ヶ所作って、関節鏡を挿入して膝関節内を観察しながら行います。以前は損傷した半月板は切除するのが一般的でしたが、切除することにより関節内の軟骨にかかる負担が増大し、徐々に軟骨の傷みが進んでしまうことがわかってきています。そのため、最近では可能な限り半月板は温存することが望ましいとされており、当院でもなるべく半月板の損傷した部分を縫合し修復することを目指して手術を行っています。

【手術後のリハビリテーション】
 半月板を切除した場合も縫合した場合も手術の翌日には退院可能です。
 半月板切除術を行った場合は特に荷重や曲げ伸ばしの制限はなく、痛みの程度に応じて徐々に歩行訓練や膝の曲げ伸ばしの訓練を行っていきます。縫合術を行った場合、術後1ヶ月程度は膝の動きを制限しますが、膝を伸ばした状態で体重をかけることは可能です。その後、膝の曲げ伸ばしを徐々に行っていきます。年齢や競技レベルによりますが、スポーツへの復帰は切除術では術後約3ヶ月程度、縫合術では術後約6ヵ月程度を目安にしています。
 膝関節内で骨の表面は滑らかで弾力性のある関節軟骨という組織に覆われています。関節軟骨があるおかげで、膝を滑らかに曲げ伸ばしができ、また運動に伴う衝撃をやわらげることができます。外傷や加齢による変性、成長期に特有な骨軟骨障害(離断性骨軟骨炎など)により軟骨損傷が起こります。
 症状は様々ですが、歩行や運動時の痛み、関節の腫脹のほか、損傷した軟骨が剥がれて関節内に挟まったりした場合には、急激な痛みと運動障害が出現します。

【軟骨損傷の診断】
 問診(はっきりした受傷があったかどうかなど)、徒手検査、単純X線やCT、MRIによる画像検査を組み合わせて診断いたします。当院では特殊な精度の高いMRI撮影法を用いて、より正確な診断および損傷範囲の評価を行っています。

【軟骨損傷の治療方針】
 加齢や軟骨変性に伴う軟骨損傷では注射やリハビリテーション(筋力訓練)といった保存的治療が中心となります。外傷や離断性骨軟骨炎などによる軟骨損傷でも、まずは安静と筋力訓練などによる保存加療が行われます。しかし関節内の軟骨片が動きまわったり(関節ねずみ)、挟まったりしている場合は、関節鏡を用いて手術的に取り除きます。その他の場合でも、軟骨は非常に修復されにくい組織ですので、損傷範囲が小さければ手術的に軟骨の修復を促進する治療(骨髄刺激法、マイクロフラクチャー法)や、中等度の大きさでは他の部位の正常軟骨を損傷した部分にもってくる治療(骨軟骨柱移植術、モザイクプラスティー法)を行っています。損傷範囲が大きい場合、特に年齢の若い運動選手などには、自分の軟骨を培養して損傷部位に移植する、自家培養軟骨細胞移植術(http://www.jpte.co.jp/business/regenerative/cultured_cartilage.html)などの先端医療も行っております。
 自家培養軟骨細胞移植術では、2回手術が必要になります。まず、1回目の手術で損傷部位を関節鏡で確認して大きさを計測、さらに培養に用いる軟骨細胞を採取します(自家培養軟骨細胞採取)。採取した軟骨を4週間培養して増やした後、2回目の手術において軟骨欠損部に移植いたします。

【手術後のリハビリテーション】
 手術後のリハビリテーション経過は軟骨損傷の部位や大きさによって異なります。
 大腿骨(太ももの骨)の荷重部に生じた大きな軟骨損傷に対して自家培養軟骨移植術を行った場合、術後は膝装具で固定し、およそ1週後より膝の曲げ伸ばしの訓練を開始します。およそ術後4週目より部分的に体重をかけた歩行訓練を行います。術後6週目には全体重をかけた歩行訓練を行います。入院期間は2週間前後であり退院後は外来でフォローします。およそ術後1年程度でスポーツ復帰を許可します。

【膝蓋大腿関節に生じた軟骨損傷の治療例】
3-1-1
膝蓋大腿関節欠損部
3-1-2
自家培養軟骨移植手術後