上肢外来

 上肢外来は、肩関節・肘関節の疾患を対象に、毎週火曜日午前に診療を行っております。対象となる疾患は以下に示すとおりです。上肢の疾患では保存療法(リハビリテーション・投薬加療など)が重要な位置を占めており、近隣の病院と連携しながら診療を行っています。保存療法で改善が得られない場合には手術を考慮し、侵襲の少ない関節鏡や人工関節などによる手術を積極的に取り入れています。

主な疾患

落合 信靖 助教
  • 日本整形外科学会専門医
山口 毅 医師
  • 日本整形外科学会専門医
佐々木 裕 医師
  • 日本整形外科学会専門医
木島 丈博 医師
  • 日本整形外科学会専門医
橋本 瑛子 医師
  • 日本整形外科学会専門医
佐々木 康人 医師
  • 日本整形外科学会専門医

診察時間

火曜日 午前 ・ 水曜日 午後

お問い合わせ

千葉大学医学部附属病院 整形外科外来
TEL : 043-222-7171(代表)




疾患説明

 人間は二足歩行のおかげで手が自由に使えるようになり、様々な発達を遂げました。その発達の大部分は精密な動きが可能な手によるところが大きいですが、その手を自由な位置に持ってきて固定をする役割を担っているのが肩関節です。自由度と安定性、この相反する2つの役割をこなすため、その骨の特殊な形状から人体の中で最も大きな可動域を持つ関節となっており、それらの骨を複数の筋肉がリズムよく働き一つの動作を完結させます。肩が痛い、動かないといった症状は、肩関節の動きのリズムが狂い、筋肉の働く方向や骨の位置が変わってしまったことがほとんどの原因です。そのため、肩疾患の治療は主に肩の動きのリズムを取り戻すにはどうしたらよいかということを考えて行います。当科では肩関節障害のうち、上腕骨頚部骨折などの外傷をはじめとして腱板断裂や反復性肩関節脱臼、投球障害肩などのスポーツ障害、変形性肩関節症といった慢性疾患を近隣の整形外科医、リハビリテーションスタッフと連携しながら治療を行っております。
解剖 【 骨格 】
肩関節は主に胸骨、鎖骨、肩甲骨および上腕骨の4つの骨と胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の4つの関節によって構成されます。一般的にいわれる肩関節は肩甲上腕関節を指しています。関節窩と上腕骨頭の面積比は1対4と小さく、関節唇が周囲を囲むことにより表面積を増大させています。それでも関節窩+関節唇と上腕骨頭の面積比は1対3程度であり、解剖学的には不安定な構造であると考えられています(図1)。

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図1
解剖 【 筋肉 】
 肩を構成する筋肉は大きく分けて二つのグループに分かれます。一つは腱板と呼ばれ、上腕骨頭と肩甲骨の向き合わせを調節するインナーマッスルとして働く筋肉群と、肩関節を動かす上で力を発揮しアウターマッスルとして働く筋肉群です。腱板は肩甲上腕関節を覆うように取り囲む棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉です。安静時、動作時ともに働き、上腕骨頭を肩甲骨窩に安定させ、肩関節の機能を発揮する上で重要な役割を果たします。そのため肩関節の痛みはこの筋肉のバランスが崩れ障害されることで発生することが多いです。
 肩関節を動かす上で最も大きな力を出すものは三角筋です。上腕骨を動かすものでは、広背筋や大胸筋が、肩甲骨を動かす上では僧帽筋、前鋸筋が大きな役割を果たします。これらの大きな筋肉による肩甲骨の動きを制御するために肩甲挙筋、菱形筋、小胸筋が働きます。
肩の疾患
インピンジメント症候群
インピンジメント(impingement)とは日本語で「衝突」という意味で、インピンジメント症候群とは上肢が動く際に肩関節の中で腱板が、肩峰や烏口鎖骨靭帯などとぶつかることによって痛みが生じる症候群です。なぜ動作中に腱板が骨や靭帯と衝突するのでしょうか?これは肩の動作を司る筋肉のバランス不良や肩甲骨の位置異常など、肩関節動作のリズムが乱れることによって関節の中で腱板と骨、靭帯が衝突すると考えられています。この衝突を繰り返すことで腱板に炎症が生じるといわれています。腱板断裂は様々な原因が関与しているといわれていますが、このインピンジメント症候群も腱板断裂の一要因と考えられています。

症状:腕を前や横に上げる動作の際に肩にズキンとした疼痛が生じます。このような症状を持つ患者さんの多くは、肩甲骨の位置が左右異なるといった見かけ上の変化を伴っていることが多いです。

治療:肩関節動作のリズム異常が原因のため、そのリズムを正常に戻すことが必要です。そのため当科ではリハビリテーションを中心とした治療を行っております。疼痛を軽減するために肩峰下腔にステロイドを注射することもありますが、動き自体が改善されなければ痛みは再発するため根本的な治療ではありません。またステロイドの使用を頻回に続けると腱組織が脆弱化したり、感染の原因となることがあるため適切なリハビリテーションを併用する事が必要です。症状がなかなか改善しない場合には、関節鏡を用いて肩峰下腔のデブリードマン(不要な組織を掃除すること)や肩峰を削ることによって肩峰下腔を広げ腱板にかかる圧力を減らすといった手術を行う場合があります。
腱板断裂
 腱板とは上腕骨頭を肩甲骨窩に保持するために必要な筋肉の総称であり、この腱板が収縮することで骨頭は臼蓋に引き付けられ、肩関節の自由な運動が可能となります。損傷の原因は強い衝撃が腱板にかかることで生じるもの、肩関節のリズムが崩れ徐々に損傷されるものが考えられます。腱板の上腕骨頭に付着している部分は血流が乏しく再生しにくい部分であるため、損傷の度合いが進むと上腕骨側の付着部付近で断裂を起こします。(図3)
03図3
症状:疼痛特に夜間痛、肩の可動域(動く範囲)が狭くなる、力が入りにくくなる、痛い側の肩が下がる、肩を動かすと音がするなどの症状が多いです。多くの場合腱板損傷による炎症や断裂の結果、肩関節の動作のリズムが崩れ、疼痛や腱板の損傷が更に悪くなり、また動きが悪くなるという負の連鎖が起こります。

治療:腱板断裂の最初の治療は疼痛改善のため内服薬や注射などを行いますが、炎症の原因を治療しなければ一時的な改善でしかありません。そのため治療の中心となるのは、悪い肩のリズムを改善することになります。地道なことですが、肩の筋肉の動かし方の練習を継続することで肩の痛みが改善されます。仮に断裂があっても残っている筋肉の使い方によって可動域の制限や疼痛などの症状が改善されます。このリハビリテーションは肩、特に肩甲骨の動きを修正することが目的となるため自分ひとりではなかなかできません。そのため運動の改善を理学療法士、作業療法士の指導の下、継続的に行う必要があります。
 腱板が切れているのにそれを治さないでいいのだろうか?と思われる方が多いと思いますが、大丈夫です。肩の痛みがあり、腱板断裂が確認された患者さんの反対側の肩には約4割に腱板断裂が認められたとの報告があり、腱板断裂をおこしていても必ず痛くなったり動きが悪くなったりする訳ではありません。当科ではまずリハビリテーション、注射や内服による疼痛コントロールを行います。それでも肩の疼痛が改善しない場合に切れてしまった腱板を継ぎ合わせる手術を行っています。
 現在当科では主に関節鏡を用いて腱板断裂を縫合する鏡視下腱板修復術を主に行っております。術後3~4週間外転装具を着用して縫合した腱板に緊張をかけないようにしております。術後1週くらいから理学療法士、作業療法士によって首や肩の筋肉の緊張をほぐし、肩関節を動かす訓練を行います。自分で肩を動かし始める時期は断裂部の状態に応じて決まりますが術後3~5週してから徐々に始めていきます。軽作業が可能になるのは術後約12週位から、本格的な職場復帰に関しては術後16週位からになります。また腱板断裂部が広範囲に及ぶ場合にはリバースショルダー(変形性肩関節症参照)と呼ばれる人工関節置換術を行う場合もあります。
04図4
05図5
06図6
スポーツによる肩関節障害
 スポーツによる肩関節の障害は大きく分けて
 ① アメフトやラグビー、格闘技などのコンタクトスポーツ中に肩関節に衝撃が加わることで発症する障害
 ② 野球、バレーボール、テニス、水泳などオーバーヘッド動作を繰り返すことによって発症する障害
 の2つになります。①によって生じる障害は脱臼や外傷性腱板断裂、上腕二頭筋腱損傷など強い疼痛を伴い、多くの場合プレーの継続が困難となります。しかし、②によって生じる障害は疼痛が認められるがプレー継続が可能であるため、重症化してから病院にくるケースが多いです。そのためここでは②についてお話します。
 オーバーヘッド動作とは腕が頭を超える動作のことで、野球の投球動作、テニスのサーブ、バレーボールのアタック、水泳のクロールやバタフライなどのストロークがこの動作にあたります。障害のパターンとしては上方関節唇損傷(SLAP lesions)と特定の筋肉を使うことで筋肉のバランスが崩れてしまい、動作中に腱板や関節唇が骨と骨の間に挟まることで生じるもの(インピンジメント症候群)が多いです。
上腕関節唇損傷(SLAP lesions)
 上方関節唇損傷(SLAP lesions)とは投球動作やアタックなど反復動作によって上腕二頭筋長頭腱に力がかかり、付着部で剥がれてしまうものを指します。この障害はウェイトリフティングのように上腕二頭筋に強い負荷がかかる競技やアメフト、ラグビーなどのタックルや転倒によって強い牽引力が加わっても生じます。

症状: 投球やアタックなどの動作時、肩の中で感じるような痛みです。

診断: 通常のMRIでは発見が困難なことが多く、診断には関節造影MRIを行う必要があります。関節造影MRIとは、肩の中に水と少量の造影剤を注入し肩関節を膨らませた状態で通常のMRIを撮影する手法です。関節造影MRIでも診断に至らないケースもあり、関節鏡で関節の中を覗いて初めて確認されることもあります。

治療: 投球やアタックによって生じている疼痛の場合、まずリハビリテーションによって筋肉のバランスの改善、ストレッチによる可動域の改善、フォームの矯正を行います。剥離の程度が大きく、症状が強い場合には関節鏡を用いて剥がれた付着部を修復します。
 手術の所見に拠りますが1~2週間装具固定を行い、徐々にリハビリテーションで肩関節の可動域を広げていきます。日常生活動作では4~6週くらいには支障なく行えるようになります。スポーツへの復帰は損傷の程度や症状の改善の具合で判断することになりますが、12週から24週くらいです。

06図7
肩関節脱臼
 肩関節は人体で最も広い可動域を持つ関節である半面、最も脱臼しやすい関節です(図8)。脱臼することで関節を覆っている骨、筋肉、関節包、靭帯、関節唇など肩関節を安定させている組織が壊れてしまい、不安定になります。安定性を失う一番の原因は関節唇の剥離に伴う靭帯の緩みです。関節唇が肩甲骨窩から剥がれることによって不安定となり、再脱臼しやすい状態になります。肩関節は主に前方に脱臼することがため、脱臼時に壊れるのは図のように前下方が最も多いです。脱臼を整復した後関節部を安静に保つことで壊れた組織はある程度修復されますが、以前よりも脱臼しやすい状態になります。これが『脱臼が癖になる』と言われる由縁です。
図8
08-1
  左:正常肩
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  右:肩関節前方脱臼
 脱臼には大きく分けて2つあります。
 ① 外傷性肩関節脱臼
 ② 非外傷性肩関節脱臼

 ① は転倒や交通事故など外力が肩関節に加わることによって生じた脱臼のことで、一般的な肩関節脱臼はこちらに含まれます。肩関節を脱臼してから安定性が悪くなり、ちょっとした動作で外れるようになる、寝ていても外れるなど肩関節を脱臼するのが『癖になった』場合、手術が必要である可能性が高いです。②は生まれつき肩関節がやわらかい人に多く、ちょっとした動作で脱臼をし、すぐに戻すことができるものです。①に関しては肩関節の組織が壊れています(図9)が、②はもともとの組織が柔らかいために脱臼を起こしているので組織はほとんど壊れていないこともあります。②が認められる、もしくは亜脱臼を繰り返す肩には治療が必要です。
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図9
治療:肩関節を脱臼した後不安定となってしまった場合、壊れてしまった肩関節の修復が必要です。当科では主に関節鏡を用いた修復術を実施しております。リハビリテーションのスケジュールは、術後3~4週間縫合した関節包に緊張をかけないよう外転装具を着用します。術後翌日より理学療法士、作業療法士によって首や肩、肘の筋肉の緊張をほぐしたり、装具をつけた状態の日常生活動作の訓練を行います。自分で肩を動かし始める時期は損傷部の状態に応じて術後3~5週から徐々に始めていきます。ある程度の作業や筋力トレーニングが可能になるのは術後約12週から、本格的な力仕事や試合の復帰に関しては術後半年位からになります。
②のように先天的に体の柔らかい人の肩関節が不安定となっている場合、肩関節の筋力がアンバランスになっていることが多いため、まずリハビリテーションにて肩甲骨周囲の安定性の向上や肩関節動作の調節を行います。それでも不安定である場合手術を検討します。
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図10
疼痛性肩関節制動症、 肩関節拘縮 (いわゆる五十肩)
 五十肩とは中高年期に生じる肩関節およびその周囲の痛みの事を指します。この疾患は江戸時代の書物(俚言集覧)に『凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛む事あり、程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕、五十肩ともいう。また、長命病という。』と記載されており古くから知られておりました。最近では石灰沈着性腱板炎や変形性肩関節症、腱板断裂などはっきりとした痛みや可動域制限の原因があるものを除いたものを『いわゆる五十肩』と言います。病態としては肩関節の潤滑油の役割を果たしている滑液包が軽微な外傷(普通の日常生活動作を長年行ってきたこと)によって炎症を起こし、結果癒着を起こし、肩が痛くて動かなくなるものと考えられています。自然に治ってくるもの知られていますが、長期成績では20~60%位何らかの疼痛や可動域制限が残ると報告されており、必ずしも元通りになるものではないものと考えられています。

症状:この疾患には大きく3つの病期に分かれています。

Freezing phase: 肩の違和感や痛みが発症し、徐々に悪化。痛みにより肩が動かなくなり、じっとしていても痛みがある、夜痛くて眠れないといった症状が出現。関節拘縮が徐々に進行していく時期

Frozen phase: 疼痛が軽減し、日常生活動作で動かない側の肩をかばう動作が減ってくるが、まだあまり動かせない時期

Thawing phase: 疼痛が少なくなり、徐々に肩を動かせるようになってきた時期。動かせるようになることで徐々に動く範囲が大きくなり日常生活に支障がなくなってくる。

症状は片側にのみ起こることが多いですが、10%位に両肩に発症します。糖尿病などの基礎疾患がある場合両側発症の確立が高くなるため、両肩に痛みが発症した場合には糖尿病などの基礎疾患がないか調べる必要があります。


治療: 『自然によくなるものであり、痛い肩は動かせば治る』と考えられ、無理やり動かす治療がされていた時期がありますが(現在も行われているところもあるようですが)これは大きな間違いです。痛くなり始めの肩は上記のfreezing phaseの時期であり、徐々に痛みが悪化してくるため無理な運動は行わずまず安静、安楽肢位や日常生活での留意点の指導、内服や注射による鎮痛が第一になります。痛みが落ち着いてきたFreezing phaseになってから徐々に肩の運動を開始します。これまでの痛みの影響で肩甲骨の位置が変わってしまっている事が多いので、肩甲骨の位置の修正から行う場合が多いです。痛みに応じて徐々に肩関節の動きを上げていくことで多くの場合よくなります。発症してからよくなるまでの期間は個人差があり、6カ月から2年くらいと言われています。
 肩関節可動域制限が残ってしまい、リハビリテーションを行っても改善しない場合には手術によって拘縮の治療を行います。当科では検査を行い、患者さんの日常生活レベルを相談した上で必要に応じて関節鏡を用いて拘縮の原因となっている関節包を切り離す治療を行っております。術後のリハビリテーションは、術翌日より頚部、肩の筋緊張をほぐす治療を行い、他動的に肩関節可動域訓練を開始します。その後痛みに応じて肩関節の自動運動を開始します。目安としては1~2週間の内には肩関節の自動運動を積極的に行って手術によって得られた肩関節の可動域を保ちます。
変形性肩関節症
 変形性肩関節症とは、脱臼や骨折などの外傷または加齢などにより肩関節の軟骨がすり減っていく疾患です。軟骨の量が減ると骨同士がこすれあうことになり徐々に変形や疼痛をきたします(図11)。膝関節や股関節に比べると発生頻度は少ないですが、肩関節に痛みを生じる原因の一つです。上腕骨頭のみ変形を来す変形性肩関節症も知られており、この原因は外傷や長年治療のためステロイドを内服していることで起こる上腕骨頭壊死のケースが多いですが、原因不明のものもあります。これらの関節の変形が疼痛や可動域制限に繫がり、日常生活に大きな支障をきたす場合手術を行います。
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図11 変形性肩関節症
治療:  骨同士の衝突によって起こる刺激によって関節内炎症が起こります。この炎症を抑えるために痛み止めの内服やヒアルロン酸の注射を行います。痛みの軽減を行いながらリハビリテーションにより日常生活動作の改善を図ります。
 炎症が強い場合、原因となっている滑膜の切除など関節内の掃除を関節鏡で行うことで疼痛の軽減が図ります。
 関節破壊が進行し疼痛や可動域制限を伴う場合には人工関節置換術を行います。人工関節置換術には、
 ① 上腕骨頭のみを置換する人工骨頭置換術(図12a)
 ② 上腕骨頭と肩甲骨関節窩の両方を置換する人工肩関節置換術 (図12b)
 ③ 従来の人工肩関節置換術と異なり、関節窩はボール型に上腕骨をカップ型に置換する人工逆関節全置換術 (Reverese total shoulder replacement) (図12c)
 の3つの方法があります。肩甲骨側の軟骨損傷の程度や腱板断裂の有無などを検討した上でどの方法を選択するかを決定しております。特に人工逆関節全置換術はヨーロッパでは20年以上前から使用され、特に腱板修復が困難な肩関節の機能回復に有効であることが報告されています。2014年4月より日本国内でもこの人工逆関節全置換術の使用が認可され、当院でも腱板修復が困難な変形性肩関節症の患者様を主な対象に行っております。

12-a図12a 人工骨頭挿入術
12-b図12b 人工肩関節置換術
12-c図12c リバース型人工肩関節全置換術
肩関節周囲の外傷
 その他外傷に関する治療も積極的に行っています。
 上腕骨頚部骨折に対するプレート固定、大小結節骨折に対する鏡視下整復固定術、粉砕骨折の際人工骨頭置換術、リバース型人工肩関節置換術、肩鎖関節脱臼に対する関節鏡視下制動術、鎖骨骨折、肩甲骨骨折に対する観血的整復固定術も積極的に行っています。
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図13 上腕骨頚部骨折に対するプレート固定
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図14 4-part 骨折に対する人工骨頭置換術

 肘には屈伸運動を行う肘関節と回内外運動(手のひらを上に向けたり下に向ける運動)を行う橈尺関節の2つがあります。動きの自由度としては肩関節と比べかなり制限されておりますが、逆に言えば安定性の高い関節です。上肢の動きのほとんどに肘は関与するため肘の痛みや動きの制限は日常生活に大きく影響します。
解剖
 肘には上腕骨、橈骨、尺骨の3つの骨があります。(下図)
2-1
図15 肘の骨

 上腕骨と尺骨を内側側副靭帯が、上腕骨と橈骨を外側側副靱帯が押さえるため肘関節は屈伸運動のみ行う安定した関節です。また輪状靭帯が橈骨頚部をぐるりと覆うようにあり回内外運動を安定させています。
肘の疾患
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
 肘の外側に付着する腱の炎症で、雑巾を絞る動作やテニスのバックハンドのような手首を伸ばす動作の繰り返しで生じることからテニス肘ともよばれます。まずは安静・ストレッチ・湿布や鎮痛剤の内服・局所注射など保存加療が行われます。ただしこれらの保存加療でも痛みが改善されない場合もあり当院ではそのような難治例に対し体外衝撃波治療を行っております。体外衝撃波療法により約70%の症例で疼痛の改善が得られております。
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図16 橈側手根伸筋付着部にMRIで白い高輝度の領域を認めますが、体外衝撃波療法で高輝度の部分が消失しています。
肘離断性骨軟骨炎、野球肘
内側部障害
 成長期の野球肘障害で多いのは、投球動作の繰り返しにより内側上顆(ひじの内側にある突出した骨)が靭帯や筋肉により引っ張られることでおこる内側部の障害です。この障害は肩甲帯、体幹、下肢の柔軟性低下や安定性の低下によって引き起こされることが多いですが、障害の原因となっている身体の機能をリハビリやある程度の投球制限によって改善することにより保存的に復帰が可能な場合がほとんどです。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎
2-2-2-1
図17
 もうひとつ成長期特有の野球肘障害として上腕骨小頭(ひじの外側の部分の骨)の軟骨障害がありこれを離断性骨軟骨炎といいます。この障害は進行してしまうと遊離体(いわゆる関節ネズミ)を生じ、痛みで肘関節の曲げ伸ばしが制限され投球時だけでなく日常動作も困難になってしまい手術が必要になる場合があります。遊離体のみであれば、関節鏡視下摘出術、痛んだ軟骨部分が大きい場合には軟骨移植術(モザイクプラスティ)を行います。
2-2-2-2
図18

 そこで平成24年度より千葉大学整形外科上肢グループの取り組みとして、離断性骨軟骨炎の早期発見および野球障害予防を目的とした野球肘検診を開始しました。具体的にはわれわれ整形外科医による超音波診断器(以下エコー)を用いた検査と理学療法士による理学検査を行っています。エコーは軟骨表面を描出することができるため、離断性骨軟骨炎の初期でも発見することができます。また、理学療法士による理学検査においては関節の可動性や筋肉の硬さなどを評価し、障害がない場合でも肩甲帯、体幹、下肢の柔軟性低下や安定性の低下によって今後引き起こされる可能性のある障害を予防するためのストレッチ指導なども行っております。  残念ながら検診時には約5-10%程度の割合で離断性骨軟骨炎が発見されてしまいますが、検診時に発見される場合は初期であることが多く、保存的に改善することがほとんどです。こうした取り組みを今後広げていくことで、将来肘の障害のために野球を断念してしまうような野球少年を少しでも減らしていければと考えております。
内側側副靭帯損傷
 関節の側方への動揺性を制御している靭帯の損傷で野球など投球動作を伴うスポーツや転落などの外傷をきっかけに生じることがあります。明らかな外傷機転があり、著名な動揺性を示す場合には靭帯再建術をすることもあります。投球動作に伴うものでは、リハビリなど保存療法が基本になりますが、なかなか痛みが改善しない症例に対し、最近では衝撃波治療を行っております。
 衝撃波治療では短期的には痛みを感じる感覚神経を減少させることによる除痛効果と、長期的には組織への血流を増加させ組織の修復を促す効果が期待されており、リハビリのみではなかなか改善されないような痛みに対して有効な治療であると考えています。また、リハビリ及び体外衝撃波等の保存療法で改善しない場合、靭帯再建術を行います。
変形性肘関節症
 関節が変形をきたすことによって痛みや可動域制限をきたすものです。著明な変形をきたす原因としては骨折による後遺症や関節リウマチなどがありますが、これらの原因がない場合もあります。変形により疼痛や可動域制限が生じ、日常生活に大きな支障をきたす場合手術を行います。 治療: 骨同士の衝突などの刺激によって関節内炎症が起こると考えられています。この炎症を抑えるために痛み止めの内服やヒアルロン酸の注射を行います。痛みの軽減を行いながらリハビリテーションにより日常生活動作の改善を図ります。 しかし、骨棘(骨のでっぱり)や遊離体により可動域制限が生じている場合、内視鏡下に骨棘切除や遊離体の摘出を行うことにより、疼痛の軽減と可動域の改善を得ることが可能です。
2-2-4
図18
肘関節拘縮
 肘関節は拘縮をきたす事が多く、特に骨折など外傷後に固定期間が続くと肘関節の動きが悪くなります。基本的にはリハビリテーションによって症状は改善します。しかし、完全に固くなってしまった場合には手術によって改善を図ることもあります。当科では拘縮の原因となっている関節包など軟部組織の切離を関節鏡によって行っております。
肘関節リウマチ
 画像上も変性が軽度であれば、関節鏡視下の滑膜切除を行いますが、関節の変形が高度で骨破壊が進行している場合は人工肘関節置換術を行うことがあります。
2-2-6
図18