千葉大学整形外科

更新日:2015/11/26(Thu)

千葉スポーツドクターリレーコラム

第9回

日本バスケットボール協会医科学研究員としての活動

 東京女子医科大学整形外科の岩倉菜穂子です。中学から大学まで自分でもバスケットボールをしており、整形外科医になった時点では当然スポーツ整形関係の道を進むつもりでいましたが、思うところがあり専門としては手外科を選択しました。けれど、縁あって日本バスケットボール協会の医科学研究部に参加するようになりました。医科学研究部とは日本バスケットボール協会の強化本部の一組織であり、医師とトレーナーを中心に構成された日本のバスケットボールを医学的な側面からサポートしていく団体です。
 現在は年に数回、ママさんバスケットボール全国大会やミニバス全国大会、ウィンターカップ、Wリーグの会場ドクターの仕事をしております。急性腹症やくも膜下出血を疑う症例に出会い肝を冷やしたこともありますが、実際に自分でプレイしていた経験もあるので、レベルの高い試合を間近で(救護席はたいてい試合を見渡せる良い席であることが多いのです)見られる楽しさもあります。さらに運の良いことに2009年から4年間U16・17カテゴリーのアジア選手権・世界選手権のバスケットボール日本代表女子のチームドクターとして帯同する機会も得ることができました。
 チームドクターの仕事としては、参加選手のメディカルチェック、持病・内服薬の有無の確認、大会開催国の衛生状況のチェック、推奨されている予防接種の実施、持参薬の選別、エコノミー症候群や衛生状況に不安のある開催地であればミネラルウォーター使用の徹底(シャワーの際にうがいしない、歯磨きもミネラルウォーターを使うなど一つ一つは細かいことです)への啓蒙、などなど多岐に渡ります。実際に遠征に出かけてしまえば、日常の選手の身体のケアはチームトレーナーが2人いますので、実際に手を出すことは少なく、腹痛や下痢、生理痛などの内科的疾患の対応が多くなります。大会の途中まで選手から医師と認識されていなかったこともあるくらいです。難しいのは実際に大会中に怪我が起きたときです。大会中にプレイが不可能な前十字靱帯断裂や骨折であればドクターストップするよりありませんが、少し深刻な捻挫や筋挫傷などの微妙な外傷の場合、コーチ陣とトレーナーと希望と現実をすり合わせた上で、例えば3日後の試合からプレイ出来るようにする、などの具体的な目標を設定し、出来る限りチームとしてベストの状態に持って行けるようにします。このような面が普段の外来とは大きく異なるところであり、チームとして動いていると実感できる部分だと思います。
 バスケットボールに限らず競技に対する思いやりとやる気、チームのコーチングスタッフやメディカルスタッフとのコミュニケーション能力があれば、スポーツ整形専門でなくてもこのような活動をすることができると思います。
 つい先日、バスケットボール女子代表がアテネ五輪以来3大会ぶりにリオデジャネイロ五輪への出場を決めました。また2020年の東京五輪も決まり、様々な種目でスポーツドクターへのニーズが高まって行くと考えます。私自身もまだまだ勉強中ではありますが、興味のある先生はぜひ臆さずにご自身の専門とスポーツドクターを両立する道を模索していただきたいと思います。
 最後になりましたが、長期に平常業務に穴を開けてしまうこともある、このような活動を暖かく見守ってくださっている加藤義治教授を始めとする医局の諸先生に厚く御礼申し上げます。

東京女子医科大学整形外科 岩倉菜穂子
図1
FIBA ASIA U-16 バスケットボール選手権大会優勝

prev 前  第1回 .. 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 .. 第26回  次 next