千葉大学整形外科

更新日:2015/12/24(Thu)

千葉スポーツドクターリレーコラム

第10回

怪我の予防とパフォーマンス向上は両立し得るのか?

北里大学医学部整形外科 見目智紀
 スポーツに怪我は付き物。より高みに達するためには多少の怪我で弱音を吐いてはいけない。これは一つの真実である事は間違いありません。多少の怪我で弱音を吐き、自重しながら競技を継続する選手がその分野において一流となり得るかは才能と運に依存する形になるものと思われます。才能を磨く事が練習であり、経験が広がり、より輝きを増す事に繋がります。そのため怪我のリスクを減らした上で、才能を磨く事に繋がる事はスポーツ整形外科の一つの目標と考えております。
 ここで怪我をしないためには?と考えた時、冒頭の一文が大きな矛盾として立ちはだかります。そのため、やはりスポーツ整形では怪我をしない事だけを考えてはいられません。では怪我をした後だけのことを考えれば良いのか?それも否であり、近年予防医学がトピックスとして取り上げられております。上肢の分野で最も大きなものが野球肘検診です。エコーを用いて、痛みの発生と保存加療の限界点が大きく乖離している肘関節離断性骨軟骨炎(OCD)を無症状のうちから発見するというこの検診は明らかにOCDによって手術を受けなければならない患者を減らす事に繋がる事でしょう。千葉大では落合先生、木島先生を中心に千葉県の野球肘検診を展開し、松戸整形外科のPT亀山先生が予防につながる理学所見について大きな成果をあげておられます。
 OCDは野球肘の外側障害と言われておりますが、野球肘内側障害である内側側副靱帯周囲の損傷に関する治療や予防は未だに議論がつきません。OCDは現在ペルテス病のような骨端症の一つと考えられ、発症の原因は血流不全、野球は増悪因子と考えるのが一般的となっております。しかし、OCDより頻度の高い内側障害は明らかに野球が発症因子です。OCDでは画像診断で治療方針がほぼ決まりますが、野球肘内側障害では画像的変化があってもそれが治療方針に繋がるとは限らず、検診を行う上でOCDとは逆の意味での悩みを抱えております。現在、野球肘内側障害の予防や再発防止に関しては球数制限など疲労のコントロールと肘関節への外反ストレスを予防する運動学的なアプローチの二つが大きな柱と考えられております。特に運動学に関してはパフォーマンスの向上に繋がるため非常に面白い分野であり、北里大学ではこちらに関して現在研究を行っております。パフォーマンス向上と怪我予防を同時に成立させる研究で皆様がなるほどと思っていただける様な結果をご報告ができればと思っております。

prev 前  第1回 .. 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 .. 第26回  次 next