千葉大学整形外科

更新日:2016/09/03(Sat)

千葉スポーツドクターリレーコラム

第18回

スキー選手における障害発生と予防

千葉大学医学部附属病院 整形外科
佐藤 祐介(H20卒)

 酷暑の中、ウィンタースポーツの話でクールダウンしていただければと思います。
 7月31日に千葉県スポーツ科学センターにて、千葉県スポーツ選手医科学相談事業の主催するスキー競技の国体・ジュニア選手強化事業にドクターとして参加させていただきましたので報告させていただきます。
 千葉県スキー連盟強化指定選手(アルペンスキー17名、クロスカントリースキー8名)、父兄、監督コーチを対象に選手のメディカルチェック、体力測定および「スキー選手における障害発生と予防」の講義を行いました。

 雪の降らない千葉でスキー選手?と思われる方が多いと思いますが近年千葉県所属の選手が全国大会で上位の成績を収めることが多くなってきています。この理由としては幼少期から中学時代までを千葉で過ごした後、より良い環境でスキートレーニングをするために越境し高校は雪国のスキー強豪校に進学し大学もインカレの一部校へ進学しスキー選手を継続する選手が故郷である千葉から国体などに出場し活躍しているからです。アルペンスキーといえば前十字靭帯損傷であり最大のtime loss injuryです。カービングスキーという板をずらさずにターンができる板の登場によりアルペンスキーは高速化され大回転競技では60~70Km/hのスピード域で体重の3倍程度の外力に耐えながらの滑走となることや、スキーブーツにより足関節が固定されているため膝や体幹への負担がとても大きくなります。国際スキー連盟も高速化による前十字靭帯発生率の増加からカービングスキーの回転半径を大きくする(曲がりづらくすることでの減速化)など用具のルール変更に取り組んでおります。これにより膝外傷の発生率は低下しましたがまだまだ前十字靭帯を損傷してしまう選手が多数います。また大きい外力に体幹で耐えるため腰部への負担も多く腰部障害に悩まされる選手も多くいます。

 当日は午前中は選手の体力測定(柔軟性計測、肺機能、最大酸素摂取量、バイオデックスによる大腿筋力、全身反応時間、反復横跳び、垂直跳び、上体起こし、背筋力、握力、無酸素パワー(アルペンのみ)、有酸素能力(クロスカントリーのみ)、障害相談を行いました。午後に「スキー選手における障害発生と予防」というテーマで1時間程度講義させていただき、その後技術講習、最後に体力測定結果の選手へのフィードバックという流れでした。

 講義ではスキー選手における前十字靭帯損傷のメカニズムと柔軟性の低下などの危険因子、体幹筋力、膝屈曲筋力の重要性を中心に説明しました。アルペンスキーにおいて前十字靭帯損傷に至るには3パターンに分類されており1,Slip-catch型 2, Landing Back Weighted型 3,Dynamic Snowplow型 に分類されます。どのような滑りがこのようなシュチュエーションに繋がるのかを伝えました。

 体力測定の結果では男女問わず筋力不足(特に膝屈曲筋力の低下)が目立ち、男子選手の柔軟性低下も散見されました。女子選手は特に背筋力が弱く高速域の高負荷に耐える身体ができていない印象でした。このような活動から少しでも膝外傷を始めとする障害に泣く選手が減ってくれたらと願うばかりです。雪無し県千葉で奮闘するスキー選手の応援宜しくお願いします。

図1
ジュニア選手とスポーツ医科学センタースタッフ
図1
講義
図1
BIODEXによる膝屈筋、伸筋測定
図1
反復横跳び
図5
希望郷いわて国体冬季大会 千葉県選手団
図6
希望郷いわて国体冬季大会 大回転競技
図7
希望郷いわて国体冬季大会 大回転競技
図8
大回転競技
図9
全日本選手権上位選手の体幹筋量
(特に腹斜筋)
図10
回転競技
図11
Slip-Catch 右膝
図12
Landing Back Weighted
図13
Dynamic Snowplow 左膝
Mechanisms of Anterior Cruciate Ligament Injury in World Cup Alpine Skiing
The American Journal of Sports Medicine, Vol. 39, No. 7 より

prev 前  第1回 .. 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回 第21回 第22回 第23回 .. 第26回  次 next