千葉大学整形外科

更新日:2017/02/08(Wed)

千葉スポーツドクターリレーコラム

第23回

若年者スポーツ選手の腰痛に対する診療の実際
~腰椎分離症に着目して~

東千葉メディカルセンター整形外科
青木保親

 平成6年卒の青木と申します。脊椎(背骨)外科を専門とする私がこのリレーコラムに登場することに違和感を持つ方も少なくないと思います。脊椎は体の中心にあり、スポーツ選手においては体幹が安定しなければ、最高のパフォーマンスを発揮することはできません。実は我々脊椎外科医もスポーツ選手、もしくはスポーツ愛好家の相談を受けることは少なくありません。そのようなわけで今回はこれまでと少し毛色の違った内容のコラムを書かせていただきます。
 さて、若年者の腰痛診療において、特にスポーツ選手においては腰椎分離症かどうかを明らかにすることが重要です。なぜなら腰椎分離症とは過度のスポーツ活動に伴う腰椎の疲労骨折であり、他の腰痛疾患とは治療法が異なるからです。骨折というとよほど痛みが強いのではないかと思われるかもしれませんが、実は痛みが軽かったり、2-3週で痛みが収まってしまう場合もあります。しかし放置をすると再発したり、最終的に骨折が治らなくなる(骨癒合しなくなる)ことがあります。骨折部が離れたまま治らなくなってしまうと陳旧性分離症という状態になります。腰椎分離症は早期に見つかれば骨癒合が期待できますが、早期に見つけるためには単純レントゲンだけでなくMRI検査が必要な場合があります(図1)。見つかる時期が遅ければ骨癒合は期待できず、その場合には陳旧性分離症となり骨癒合は期待できません。実際には日本人成人の約6%に陳旧性分離症が認められ、一部の方は強い腰痛で悩まれることもありますが、無症状の方もいらっしゃいます。もし陳旧性腰椎分離症の患者さんを見つけても保護者の方には過度の心配はさせないように説明することが賢明です。
 しかし、若年スポーツ選手が腰痛で悩まないため、将来の不安を残さないために、脊椎外科医、スポーツドクターは腰椎分離症を早期発見するために努力する必要があります。
 我々は早期の腰椎分離症に特徴的な症状を研究してきましたが(図2)、これが早期に腰椎分離症を見抜くヒントになります。我々の研究を要約すると早期の腰椎分離症に特徴的な症状は、動作時の腰痛が強いことと、長く立っていたり座っていたりすることで腰痛が増強しないこと(若い腰痛患者さんは座っていると腰がだるくなってモゾモゾする人が多い)、鋭い痛みであること、痛みの範囲が狭いこと、片側の腰痛の方が多いことなどです。下記文献を参考にしていただけますと幸いです。
 腰痛でお困りの中高生スポーツ選手の方、思い当たる節がありましたら悩まれる前に脊椎専門医かスポーツドクターにご相談ください。

図1
図1
図1
(左)レントゲン写真では骨折ははっきりわかりません(黒矢印:この部が疲労骨折好発部位です)。
(右)MRIでは骨折部の輝度変化が明らかです(黄色矢印:骨が灰色から黒く見える撮影法ですが、骨折部は白くなっています)。
図1
図2
腰椎分離症の研究は、西川整形外科リハビリテーション科部長の杉浦氏と共同研究しております。写真はオランダ・アムステルダムで開催された国際腰椎学会の会場前で撮影。杉浦氏が腰椎分離症の診断につき発表しました。左が筆者、右が杉浦氏。


参考文献
  • 青木保親、杉浦史郎、高橋和久、西川悟. 中高生年代の成長期分離症の診断とスポーツ復帰. Monthly Book Orthopaedics 27(13), 29-36,2014.
  • Sugiura S, Aoki Y, Toyooka T, et al. Characteristics of low back pain in adolescent patients with early-stage spondylolysis evaluated using a detailed visual analogue scale. Spine 2015;40-1:E29-34.
  • 青木保親、杉浦史郎、高橋和久、大鳥精司、西川悟. 腰椎分離症の診断とスポーツ復帰. 関節外科 35(5)12-22, 2016.

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