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名誉教授の独り言(179) 元若嶋津

更新日 平成29年10月27日

 二所ノ関親方(元大関若嶋津)が緊急で病院に運ばれ重傷のようです。折角、審判委員長として活躍なさっていたのに、と思うと大変心配です。もともと糖尿病があったようですが1日も早い回復をお祈りしています。それにしても力士、元力士は色々と病気、怪我になりやすいように感じています。少しでも大きくなるために大飯を食らい、巨体同士で怪我をさせあっているのですから仕方ないかなとも思います。

 最近は力士の怪我が多くなった主な原因として力士の大型化と稽古不足などが挙げられています。幕内力士の平均体重は1953年には114.5Kgだったのが、2017年には164.3Kgになったようで約60年の間に 50Kgも増えたようです。私が横綱審議委員を務めていた10年間でも平均体重が増えた印象があります。稽古不足は明らかです。稽古総見の時でも、理事長にハッパをかけられてやっと土俵に上がる力士がいたり、段々と稽古時間は短くなり、早い時には朝青龍関が横綱だった時と比べると30分ぐらい早くお仕舞になってしまうこともあり、折角朝早くから稽古を見に行ったのに「もうおしまい?」と感じたことも度々ありました。

 その様なことで力士の怪我は確実に増えています。膝が最も多く、肘、足関節、手関節などが続くように思います。膝で最も重症な怪我は前十字靭帯損傷です。体重が重くなり、筋力が付いていかないと態勢次第では膝が内側に入ってしまい、前十字靭帯が断裂してしまいます。そしてそのまま相撲を取っていると半月板損傷を続発してしまいます。怪我の予防として親方たちはテッポウ、シコ、すり足などを沢山することだと教えているようですが、もちろんそのような基礎訓練は必要だと思いますが、それだけで十分とは言えないように思います。

 でも、力士はスーパーマンのように思います。どこも痛くない状態で相撲を取る力士は居ないのではないでしょうか。どんなに痛みがあっても、痛みが軽くなればまた稽古を再開します。そして勝ちが続くと白星が最高の薬とか言って好成績を残したりします。でも、結果としては力士寿命を短くしているように思います。

 両国国技館の地下2階には「相撲診療所」が開設されています。でもそこには単純レントゲン撮影装置はありますが、CT,MRIはありません。力士は地方場所では体が大きすぎてMRIのガントリーに入れないこともあるようです。内科的疾患も含め、診断まではしっかりできる態勢にした方が良いように思っています。さらに入院施設もしかるべき医療関係者の意見を聞き、ちゃんとした病院を指定すべきと感じています。ただ「優しい医師だから」とか、「こちらの希望を優先してくれるから」という理由で選んではいけないと感じています。さらに保存的治療をするにしろ、手術後にしろ、相撲診療所で、ある程度の療養指導、リハビリテ―ションなどの出来るようにした方が良いと思います。八角理事長は最初の理事長選挙の時の公約として、相撲診療所の充実も挙げていました。今年の9月場所前に短期間幕下以下の力士がリハビリテーションを出来るようにしたようですが、常設にして頂ければと願っています。

 相撲は日本の国技だと言われています。一人でも多くの力士が内科的疾患や不本意な怪我を予防し、運悪く怪我をした場合は正しく診断され、早期復帰できるような治療を受けてくれることを願っています。