Research

研究

脊髄損傷

更新日 2017.11.6

急性期脊髄損傷に対する医師主導治験

-脊髄損傷に対する新規薬物療法の開発-

 

1. 脊髄損傷とは

 脊髄損傷(せきずいそんしょう)は怪我により脊髄がダメージを受け、四肢および体幹の運動麻痺・感覚麻痺・排尿排便障害をきたす疾患です。怪我による脊椎の変形や脱臼は手術により修復可能ですが、現在のところ、怪我で傷ついた「脊髄」に対しては直接的に効果のある有効な治療法はありません。

 日本では、脊髄損傷に対し損傷直後の場合にはステロイドという炎症を抑える薬による治療が保険適応となっております。しかし、最近ではステロイド大量投与による副作用を心配する声や、その治療効果があまりないのでは、という報告も増えており、徐々に行われなくなってきております。ステロイド大量療法に代わる治療法が羨望されております。

 

2. 急性期脊髄損傷に対する医師主導治験

 我々の研究室では脊髄損傷モデル動物を用いた基礎医学的研究にて、顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF)による運動麻痺改善効果を明らかにしました。G-CSFはすでに他疾患において臨床での使用が認められている薬剤です。G-CSFは骨髄(新しい血球を作るところ、一部幹細胞もいます)から幼若白血球を血中に動員する作用を持ち、血中の白血球を増やします。臨床現場では白血球が減った患者さんなどに使用されております。我々はこの薬自体による脊髄への保護効果と、G-CSF投与によって骨髄から動員された幹細胞が脊髄損傷に保護的に働くことを基礎研究で証明しました。動物実験で安全性、有効性を確認後、まず少人数の脊髄損傷の患者さんにG-CSFを点滴しました。その結果、G-CSFの脊髄損傷患者さんへの安全性と適切な投与量が確認されました。次に少し患者さんの数を増やして投与しました。投与しない人に比べて麻痺の改善がみられることがわかりました。現在、我々は「急性脊髄損傷患者に対する顆粒球コロニー刺激因子を用いたランダム化、プラセボ対照、二重盲検並行群間比較試験」という医師主導治験を行っております(図)。この試験はG-CSFの効果および安全性をみる最終段階の試験です。この試験結果でG-CSFの急性期脊髄損傷への安全性および有効性が証明されれば、麻痺で苦しむ脊髄損傷患者さんに新たな革新的治療法を提供できることになります。

 

3. 脊髄再生医療の展望

 ただ、脊髄再生の道は大変険しく、おそらくこのG-CSF単独では重度の脊髄損傷の患者さんの麻痺を劇的に回復させることはできないでしょう。しかしながら、僅かな麻痺の回復でも脊髄損傷患者さんの日常生活動作にとっては大きな差になり得るため、この治験は世界的に大変注目され、かつ期待されています。また、現在研究が急ピッチで進んでいるiPS細胞や骨髄間質細胞に代表されるような幹細胞移植療法、ロボットスーツを用いたリハビリテーション療法、損傷部に生じた軸索伸展阻害因子を溶かす薬剤等もそれぞれ薬事承認を受け、将来臨床で使用できるようになったら、脊髄損傷治療の選択肢が増え、さまざまな治療の組み合わせによって患者さんの日常生活動作、生活の質の改善につながるのではと考えています。

 

4.現在進行中の治験について

 現在治験はいわゆる第Ⅲ相試験という臨床試験の最終段階のステージのものを行っています。全国約20の参加施設で急性期脊髄損傷患者さんに対し治験薬を投与して評価を行っております。この試験は、治験のルールに準拠した大変厳しい試験です。この試験で患者さんはG-CSFまたはプラセボという偽薬 (効果のない薬の溶媒)が投与されますが、患者さんも我々も実薬 (G-CSF)なのか、プラセボ薬なのかわかりません。最終的にあらかじめ設定した予定患者さんの数に投与が終了したら試験結果を開示して検討します。この治験でG-CSFの脊髄損傷への効果が証明されれば「承認申請」といって、脊髄損傷患者さんに適応できるようにする手続きに進みます。厚生労働省での審議を受け、安全性、有効性に問題がないと判断されれば、いよいよ急性脊髄損傷の新たな治療法として一般使用できるようになります。2017年11月4日現在、治験組み入れ症例は68例となっております。引き続き目標の88例に向かって患者さんの組み入れを行っております。

 

 

 

 

以下、我々の医師主導治験関連ウェブサイトへのリンクURLです。

http://www.chiba-crc.jp/g-spirit_trial/index.html

 

本治験に関するお問い合わせは下記にお願いいたします。

千葉大学大学院医学研究院整形外科学 頚椎脊髄グループ

TEL:043-226-2737

MAIL : G-SPIRIT@ML.chiba-u.jp