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2018 Asia Pacific Spine Society(APSS)参加記

更新日 2018.6.21

平成25年卒
葉 佐俊

2018年6月7日から6月9日にかけて台湾の台北と花蓮で開催されました2018 Asia Pacific Spine Society(APSS)に参加させていただきましたので報告させていただきます。今回は私の父である葉國璽の故郷の花蓮で開催されることもあり、古矢丈雄先生 (H13卒)、折田純久先生(H16卒)と一緒に参加させていただきました。

初日の7日は花蓮でAPSS cadaver courseを行い、8~9日は台北の台湾大学でAPSS scientific programに参加いたしました。

花蓮は今年の2月に地震があり、テレビでは建物の崩壊なども報告されており行けるかどうか危ぶまれましたが無事に到着することが出来ました。花蓮は台北から特急電車で2時間程度の所ですが翡翠が有名な小さな海辺の田舎町です。私自身花蓮を訪問するのは2回目ですが現地では両親の知人に案内していもらいました。学会の前日には両親の母校や美しい海岸、夜市を案内していただき父の故郷に触れることができました。翌日はAPSS cadaver courseに朝から参加させていただきました。日本・台湾からはもちろんのこと、インドやシンガポールといった国からも先生方が来られていました。私は脊椎グループではありませんが一緒の班だった先生方に懇切丁寧に教えていただき今まで見たことがない手術を実際に見たり、手を動かしてやることができ大変勉強になりました。

Cadaver course終了後台北に移動し、台湾国内留学中の東山礼治先生(H13卒)が食事会を催してくださったため山縣正庸先生(S52卒)と千葉大学に研修に来られたことがある先生方と一緒に食事をすることができ、とても楽しい夜を過ごすことができました。

翌日からは台湾大学で行われたAPSS scientific programに参加しましたがここでもアジア各国の医療の進歩が著しいことを知ることができました。私自身国際学会に参加するのは今回が2回目ですが発表をしたことはまだ無く、古矢先生と折田先生の素晴らしい発表に感化され、私もこの様な発表ができるように日々の学業に精進しようと思いました。両先生の発表以外にも興味が湧くような発表があり、脊椎の面白さを実感する学会となりました。

短い期間の滞在ではありましたが様々な方のご協力のもと無事に帰国することができました。また現地では様々な先生にお会いすることができ、大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。アジアの医療水準は年々上昇してきており、私としても国内だけはなく国外にも視野を広げる必要があると再認識しました。今後機会があればどんどん国内外問わず学会に参加し、自分の見地を広げていこうと思いました。

最後になりますがこのような機会を与えてくださった父である葉國璽(H5卒)と留守中に業務を引き受けてくださったリウマチ・股関節グループの各先生、および参加を快諾してくださいました大鳥精司教授に深く御礼を申し上げます。

 

 

発表演題

  1. Sumihisa Orita, et al. Retrospective review of short to mid-term outcome in oblique lateral fusion (OLIF51) surgery
  2. Takeo Furuya, et al. Efficacy of posterior decompression with instrumented fusion for K-line (-)-type OPLL: minimum 5-year follow-up

APSS cadaver course参加記

折田純久(H16卒)

 

時折雨期によるスコールのような雨の降る蒸し暑い花蓮に一泊したあくる日の6月7日,APSSによるcadaver seminorが佛教慈濟大学(Tzu Chi University)にて行われました.同大学は仏教系の私立大学で台湾国内にも複数の分院を持つ有数の医学部を有しています.仏教文化が根強い台湾では附属病院(佛教慈濟綜合醫院)への帰依も強く,生前から多くの方が献体を希望されるとのことでした.

実際に実習が行われたのは同院にある近代的なMedical Simulation Centerで,我々以外にも数名の日本人を含め,アジアから活気にあふれる若手医師が集合,講師にも頚椎手術で非常にご高名な鐙 邦芳先生をはじめ各国からの著名な先生が集まってのセミナーとなりました.

私が最も衝撃的かつ感銘を受けたのは,同院におけるご献体への敬意の高さです.

同院では,ご献体を“silent mentor”と呼んでいます.敢えて邦訳すれば「沈黙の教師」となるでしょうか.実習開始前にご献体の頭上に掲げられた大型ディスプレイにはご献体の生前の写真,氏名,年齢,死因と病歴,そして生まれてからの人生の紹介スライドが流されています.全員でスライドを謹んで拝見してから合掌すると,目の前に静かに横たわるsilent mentorへの敬意が高まるのを感じました.

実習は頚椎の上位における固定や骨切り,腰椎での骨切り・S2AIスクリュー刺入など多くの実戦的な内容を学びました.

セミナー修了後は翌日からのAPSSに備えて鉄道にて台北へ移動,そこでは同じく学会に参加するために訪台されていた山縣正庸先生(S52卒),そして台湾国内留学中の東山礼治先生(H13卒)含む先生方との会食の機会を賜ることができました.本セミナーや翌日からのAPSSでは2016年に日本脊椎脊髄病学会のAsia Traveling Fellowとして訪台した際にご指導頂いた先生や,見学生として千葉にいらっしゃった先生とも再会するなど,数々の人々と再会した非常に有意義な機会でした.この場をお借りして関連各位に御礼申し上げます.

 

APSS scientific program参加記

古矢丈雄 (H13卒)

 

前日の佛教慈濟大学 (佛教慈濟綜合醫院)でのAPSS cadaver courseに続き、APSS scientific programに参加いたしました。学会は台湾大学医学部附属病院に隣接する台湾大学附属病院国際会議場 (台大醫院國際會議中心)で行われました。学会場は4会場と、比較的コンパクトな学会でした。地元台湾からの参加者が多くみられましたが、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、オーストラリア等からの参加がありました。

シンポジウムでは脊椎学会定番の成人脊柱変形、小児脊柱変形、低侵襲手術、腫瘍、骨粗鬆症関連疾患等が組まれておりました。特徴的な点は、台湾は強直性脊椎炎の症例が多いようで強直性脊椎炎のシンポジウムが組まれておりました。また、特別講演においてもCongress Chairmanである佛教慈濟大学のIng-Ho Chen先生が強直性脊椎炎に伴う重度脊柱変形の治療戦略をお話しされておりました。最重度の症例は股関節の硬直も合併しているので、股関節の人工関節全置換術と脊椎の変形矯正手術の両者を行う治療ストラテジーについて概説されておりました。腫瘍のシンポジウムでは慶応大の中村雅也先生が髄内腫瘍の治療戦略をご講演されておりましたので聴講させていただきました。悪性の脊髄星細胞腫に対する脊髄離断術の成績をご自身の治療経験を交えお話しいただき、大変勉強になりました。一般口演として折田先生はL5/S1椎間のOLIFに関する手術成績の発表を行い、私はK-line(-)型頚椎後縦靭帯骨化症に対する後方除圧固定術の中期成績についての発表を行いました。小さな会場でアットホームな感じの中、両発表ともいくつかの質問をいただき、今後の研究や臨床に意義のある討論をさせていただきました。

学会のOpening ceremonyでは本学会の歴史や今後の展望について学会の重鎮先生方が解説されました。千葉大学整形外科教室の第2代教授であります井上駿一先生が学会創設期に本学会の発展に深く関わったお一人として紹介されておりました。また、当時の千葉で行われた学会主催のclinical course当時のお写真も提示されました。千葉大学整形外科教室の当時のメンバーとアジア諸国の先生方がレントゲン写真の前で討論されている風景や、手術室での一コマが紹介されておりました。

ご一緒に参加された千葉ろうさい病院山縣正庸先生 (S52卒)より、本学会は最近千葉からの演題が少ないので、今後は少し力を入れていきましょうとのお話をいただきました。学会の規模としてはそれほど大きくないものの、アジア各国からの発表内容、質疑とも一定レベルを保っており、若手先生方の国際学会参加としてはちょうどよい学会と認識いたしました。何よりもアジア諸国の先生方と交流する大変良いチャンスと思います。是非とも今後は千葉大学整形外科教室も積極的に本学会へ演題を出して参加するのがよいと感じました。

最後に不在中、業務を代行いただいた脊椎脊髄班先生、および参加を快諾してくださいました大鳥精司教授に深謝いたします。また、今回の台湾訪問に多大なる後方支援をいただいた、ちはら台整形外科葉國璽先生 (H5卒)と、現地案内役を買って出ていただきました葉佐俊先生 (H25卒)には本当に感謝申し上げます。また現地お世話になりました葉國璽先生のご親友の先生方、旧友の皆様、東山礼治先生 (H13卒)にもこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。