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第46回CSRS参加記

更新日 2018.12.17

平成13年卒
古矢丈雄

第46回CSRS (Cervical Spine Research Society) Annual meetingに出席いたしましたので報告します。本年は2018年12月6日~8日の日程でArizona州Scottsdaleでの開催でした。Scottsdaleは避暑地として有名な町です。12月ですので朝晩は少々冷え込んだものの、日中は大変過ごしやすい気候でした。残念ながら千葉大および関連施設からの口演採択は無く、演題は私のe-poster2題という結果でしたが、その分、ほかの発表をリラックスして聴講することができました。

 

昨年も書きましたが、ここ1-2年の傾向としていわゆるBig Data, コホート研究データを用いた疫学、合併症調査、医療経済に関する演題は減り、症例対照研究が増えており、臨床医としては嬉しく思いました。Current topicsとして学会でフューチャーされていたのはCervical deformityに関する発表と、ACDF (Anterior cervical discectomy and fusion、頚椎前方椎間除圧固定術)とCDA (Cervical disc arthroplasty、頚椎人工椎間板)の長期成績比較に関する発表でした。Cervical deformityについては、およそ‘deformity’とは言えないような軽微な頚椎後弯を含め論じているような演題がある一方、重度の首下がり症候群についての発表演題もあり、まだ「Cervical deformity」という疾患群に対する脊椎脊髄外科医各人のイメージが統一されていないと感じました。NYのAmmesらが提唱する分類はだいぶ認知されつつありました。今回の演題では、新しく手術成績の予後予測を行うスコアリングが提唱されておりました。また、FlexibleとRigidの定義や術式選択について熱く議論が交わされておりました。CDAについて、私は2時間のランチョンWorkshopに参加しました。小さな会場で聴衆参加型のdebate形式で行われました。冒頭で2椎間病変におけるACDFに対するCDAの優越性が紹介され、(椎間高が減っている変性椎間板病変にもスプレッダーで持ち上げてArthroplastyを行うラジカルな)CDA信者のメインモデレーターと、「別にそんな症例はACDFでもいいんじゃないの」という感じの多くの参加者の間での熱い本音トークが繰り広げられたWorkshopでした。私を含め参加者の多数は「CDAは適応を選べばよい手術だよね、でもACDFより (しっかり除圧ができないと症状が改善しないという点で)技術的に難しいし、手術にはより神経使うし、高齢者・重度の骨棘例・重度脊髄症例への適応は慎重になるよね」という立場でした。以前CDAをやっていたが今はやめてしまった先生や、20年前からMobi-Cの治験から関わっていたというヨーロッパの先生からもコメントが出たり、大変活発な議論が行われ、今後の日本での普及について大変勉強になる有益なWorkshopでした。

 

学会の合間の夜には今回同行した牧聡先生 (H18卒)が当番幹事としてマネージメントくださった若手日本人会が開催されました。また、業務の安全祈願ということでScottsdaleから車で2時間ほどのところにあるパワースポット、Sedonaへ足を延ばしてTrail Walkをして参りました。これらは牧先生が報告してくれると思います。

 

最後になりましたが、学会参加を快諾いただきました大鳥精司教授、病棟の留守番を引き受けてくださいました北村充広先生、宮本卓弥先生、研修医先生に感謝申し上げます。

 

e-poster

  1. Takeo Furuya et al.: Efficacy of Posterior Decompression with Instrumented Fusion for K-line (-)-type Cervical OPLL -Comparison between long fusion and short fusion-
  2. Takeo Furuya et al.: Efficacy of Posterior Decompression with Instrumented Fusion for K-line (-)-type Cervical OPLL: Minimum 5-Year Follow-Up

 

会場にて

                                          

  平成18年卒 牧 聡

 

古矢先生が学会自体の報告をされましたので私は学会以外での活動についてご報告いたします。

学会初日の夜に本学会に参加している日本人の若手?脊椎外科医の懇親会の幹事を千葉大学が務めました。本会は東京医科歯科大学整形外科吉井俊貴先生の発案でここ数年毎年行われております。日本からの演題採択が例年より少なかったということもあり、昨年よりも参加者は少なかったものの、当日は総勢30名の先生方にご参加いただきました。当日は横浜南共済病院の三原先生にゲストとして来ていただき大変盛り上がりました。会場はカジュアルなメキシコ料理屋で行い、いわゆる日本の居酒屋の「飲み会」と同じような雰囲気で肩肘張らない、くだけた雰囲気で他の大学の先生方と交流が持つことができたと思います。海外での懇親会の幹事は初めてでしたがトラブルも無く無事終わって安堵いたしました。
若手の会とは言いつつも、学会などでは既にオピニオンリーダー的な中堅の先生も多く、そういった若くしてリーダーシップを発揮している先生や私より若い世代で活躍している先生と話ができて大変良い刺激を受けました。
北米のCSRSでは症例数の大きい北米の大きい規模の研究の比重が大きくなりがちですが、歴史的に頚部脊髄症を多く診療している日本からどんどん情報発信をして日本のプレゼンスを高めていこうという吉井先生からの挨拶で参加者一同、志を一つにいたしました。

 

スコッツデールから車で2時間のセドナにも足を伸ばしました。セドナへは筑波大学の三浦紘世先生と行動を共にしました。セドナはネイティブ・アメリカンの聖地で、癒しのパワースポットとしても有名です。大地からのエネルギーが放出されている場所を「ボルテックス」と言うらしいのですがその4大ボルテックスであるカテドラルロック、ベルズロックのトレッキングを行いました。軽い気持ちで登り始めましたが傾斜がどちらも非常にきつく、登るのは結構大変でした。しかし登り切ったあとは絶景を望むことができました。ちなみに筑波の三浦先生は革靴でトレイルを登りきり、アメリカ人にも驚かれていました。

来年の本会はニューヨークで行われる予定です。近年採択率が厳しくなっている本会ですが来年こそはしっかりと準備をして演題を通して参加をしたいと思います。

 

 

日本人懇親会の集合写真

 

 

カテドラルロックのトレイル終点にて