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AOFAS travelling fellowship 2018報告

更新日 2018.7.30

平成11年卒
山口 智志

201877日から722日までAOFASAmerican Orthopaedic Foot and Ankle Society)のtravelling fellowshipに参加しました。

 

概要

 AOFAS annual meetingの学会費と飛行機代がタダになればと思い軽い気持ちで応募したのですが、応募書類として履歴書の他2名の自署付き推薦状、詳細な内容を指定された500 wordの自己推薦状などを要求され、意外に手間がかかりました。また予防接種証明書や個人情報保護のテストの受講などを各施設から要求されました。学会のサポートは手厚く、飛行機やホテルの予約はもちろん、旅行保険、滞在費の支給など全てアレンジしてもらいました。

 

Fellow

 今年のメンバーは全員international memberで、Jinsong Hong(中国)、Dong-Oh Lee(韓国)、Kaan S. Irgit(トルコ、トルコ足の外科学会会長!)、Charles RJ Jowett(イギリス)、Pradeep Moonot(インド)の各先生、そして私の6名でした(写真)。大人数で心配だったのですが、チームワークが良く、全員と素晴らしい友人になることができました。日曜日に全員で観戦したサッカーW杯決勝は、旅のハイライトになりました。

 

AOFAS annual meeting

 今年はボストンでの開催でした。Pre-meetingを含め4日間で、大学院生の木村先生と貞升先生がposter、私がe-posterでの発表でした。”Best paper I read this past year”というシンポジウムで、韓国のKyung-tai Lee先生が中川量介先生の論文(Association of Anxiety and Depression With Pain and Quality of Life in Patients With Chronic Foot and Ankle Diseases. Foot Ankle Int 2017を挙げてくださり、誇らしかったです。Fellowは様々なsocial eventへの参加が要求されており、忙しい日々でした。

 

施設訪問

今回の訪問先は4施設で、BostonBrigham Foot & Ankle Center at Faulkner HospitalMassachusetts General Hospital)その後AOFAS Annual Meetingに参加し、CharlotteOrthoCarolina)、New YorkHospital for Special Surgery)でした。全ての施設は3-6名の足の外科医が在籍するfoot and ankle centerがあり、多くの手術と臨床研究を行っていました。

 

失敗

 今回が3回目のtravelling fellowshipだったのですが、忙しい日常業務のなか慌てて旅立つので毎回失敗をします。前回のfellowshipでは、出発時に成田空港と羽田空港を間違えてしまい合流が1日遅れてしまいました。今回の失敗は、①ノートPCの電源を忘れた(後から合流した貞升先生に持ってきてもらう)、②最初の滞在地のBostonJOSSM-AOSSMtravelling fellowで米国にいらしていた先生方と会食をした際、名古屋市立大の武長先生とクレジットカードを取り違えた(幸運にも、最後の訪問地が共にNew Yorkだったため、再会し交換)でした。

 

医療事情の相違点

①糖尿病性足病変は大きな問題になっているようでした。近い将来、日本でも同様のことが起こると思いますので、足の外科医は準備をしておく必要があります。

②日本では普及していない人工足関節が非常に多く行われていました。多くの成績不良例の一方、経過が大変よい患者さんもいるようです。人工足関節は膝、股関節と比べ成績がはるかに劣りますが、今後は選択肢として検討が必要だと感じました。

③外来では、我々が日常診療で行っている予診、創処置、ギプス巻き、超音波検査、衝撃波、装具などの業務のほとんどをphysician assistantや放射線技師などが行っており、医師は短時間患者さんと話をするだけです。注射すら自分では行わず放射線医に依頼する医師が多いようです。効率はよいですが、患者満足度や医療の質を維持できているのかは分かりません。

④よく知られていることですが、米国では医療はお金次第です。手術室では、手術適応の話と同じくらいインプラントや手術費用の話をしていました。人工足関節など特定の手術を推進する医師は、必ず利益相反が存在します。術式の流行はmarket-drivenな側面が大きいであろうというのがfellowの一致した意見でした。

⑤必ずしも有名な施設で上手な手術が行われているわけではないことを再確認しました。この点では、日本人は自信を持ってよいと思います。

 

収穫

Fellowや多くの米国の足の外科医と直接話ができたのが最大の収穫でした。詳細な手術適応や手技は、論文を読むだけではわからないことがたくさんあります。研究面でいえば、日本でも多施設研究を推進し、多数例の解析がますます重要になると感じました。一方で、日本の医療事情の独自性を生かして画像解析、高齢者を対象とした研究、基礎研究などを推進すれば国際的に注目される研究ができると感じました。

 

最後に、2週間の不在をお許しいただいた大鳥先生、佐粧先生、不在中の業務をサポートしていただいた赤木先生をはじめとするスポーツグループの先生方に感謝いたします。

 

写真

AOFAS annual meetingにて。左からJowettHongIrgitMoonotLee各先生、筆者。