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2018年度 台湾Traveling fellowship参加記

更新日 2018.10.30

H21年卒 
井上 雅寛

20181014~28日に台湾の国立台湾大学醫学院付設醫院(National Taiwan University HospitalNTUHおよび林口長庚紀念醫院(Chang Gung Memorial HospitalCGMH)で研修して参りましたので報告させて頂きます。この千葉大学整形外科と両病院との交換留学は昨年度より葉國璽先生(H5)の御発案, 御尽力により始まったもので, 本年は2回目となります. 今回リウマチ股関節グループの葉佐俊先生(H25)と一緒に, 私は特に脊椎外科を専門に研修させて頂きました.

 

台北市は台湾(中華民国)の首都であり, 台湾経済の中心都市です. 今回最初に留学させて頂いたNTUHはベッド数2000床、医師数1000名を超える大病院で、台北市中心部の広大な敷地に、1895年創設当時の歴史的な建物(主に外来棟)と約15年前に建てられた近代的な施設(主に救急患者や入院の受け入れ), こども病院, 研究棟までもが並んで立地しております. 手術は小児, 腫瘍, 関節, 脊椎等, 整形外科だけで年間4000~5000件行われております. 脊椎手術は腰椎の低侵襲手術(MIS)の手技を中心に見せて頂きましたが, 医療保険によるインプラントの制限があり, PPSではなく筋間アプローチによるMISが主流とのことでした. 台湾における医療保険制度では日本と異なり, ある一定以上の医療に関しては自費となります. そのため手術においても保険でカバーされるインプラント, 手術周辺機器が決まっており(概ね国産企業), 日本でよく使用される経皮的ペディクルスクリューやロッキングプレートはもちろん, なんと日本では手術中使用が当たり前の下肢の加圧器, 温風による加温器なども自費となります. そういった経緯から台湾での手術はその患者に合わせて, 金額も考慮したうえで使用インプラントが選ばれるようでした. ほとんどのインプラントが医師の裁量で選択可能な日本と異なっており, 日本ではOLIFですら保険内に含まれることに, 台湾の医師は非常に驚いておりました. また滞在期間中には脊椎症例のカンファレンスにも参加させて頂き, 各症例に対する当院での手術適応(方法)など, ディスカッションすることが出来ました.

 

滞在2週目はCGMHでの研修です. CGMHは台湾最大の医療グループで, 8つの病院を有し, 台湾国内の病院の全ベッドの10%を占めています. その中でも今回研修させて頂いた林口病院は病床数約3000, 手術室数120, 整形外科年間手術件数 約12000件のマンモス病院で, 脊椎手術だけでも110-30, 5人の執刀医が各部屋で同時に手術を行うことができます. 今回の研修では外からの見学だけでしたが, 頚椎では椎弓形成術, 人工椎間板置換術, 胸腰椎においては椎体形成術(セメント置換)から, 椎弓切除, 後方固定術(MIS含む), 経皮的内視鏡下椎間板摘出術(PELD, 感染性椎間板炎(術後感染)に対する前方アプローチでの洗浄など, 非常にバラエティに富んだ手術をみることが出来ました. またCGMHでの滞在中に1日だけ分院である嘉義病院(ここも1400床あります)を見学させて頂きました. ここではMIS-TLIFの手技とともに, 当院でも脊椎への応用が研究されているPRPに関して, 血液採取からPRPを作成し膝へ注入するまで, 一連の流れを見させて頂きました. 今回多くの手術を見させて頂いた印象としては, 台湾では医療保険の兼ね合いから新規導入のインプラント使用がそこまで多くなく, 後方固定においてはPPSの使用に制限があるため, MISではなく従来的なopen methodで行われることが多い. さらにやはり前方椎体間固定に関してはいろいろと制限があるようでした. しかし, その分手術手技は洗練されており, あっという間に除圧が終わり, スクリュー, ケージが挿入されていく姿には非常に驚きました. また症例数が圧倒的に多く, 私と同年代の脊椎外科医が年間200-300件の手術をこなし, さらにそのデータを蓄積・解析している姿を目にすると, 非常にモチベーションが上がりました.

 

本留学の1つの目的として, 20181026-27日に開催された第75回中華民国骨科医学会(Taiwan Orthopaedic Association; 通称 TOA meeting)への参加および口演発表がありました. これは多くの整形外科医が参加する, 日本における日本整形外科学会総会にあたるもので, 非常に熱気があります. 私はOLIFによる大腰筋損傷についての発表をさせて頂きました. 両病院での研修中にも強く感じましたが, やはり台湾における前方固定術への注目度は高く, 制限時間を超えて非常に多くのコメント・質問を頂きました.

 

今回の研修では病院内外において非常に多くの方が我々をサポートして下さいました.このことは私の整形外科医師としてだけでなく, 一個人としても良い経験となりました. 今回海外における同じ志を持った友人が何人も出来たことを何よりも嬉しく感じており, いつかこの恩返しができればと思います. 最後になりますが, 本留学への参加を後押ししてくださいました大鳥精司教授ならびに腰グループの先生方, 医局の先生方, そして本留学に際し細部にまで御尽力頂きました葉國璽先生, 東山礼治先生にこの場をかりて深く御礼申し上げます.

第二回台湾トラベリングフェローを経験して

平成25年卒 葉 佐俊

 

20181015日から28日の約2週間の間、第2回目の千葉大学-台湾トラベリングフェローとして台湾を訪問させて頂きましたので報告させて頂きます。

2回目の今回は脊椎グループの井上雅寛先生(平成21年卒)と一緒に訪台し、私は特にTHATKAといった人工関節系の手術を多く見学させていただきました。

1015日から19日までの間はNational Taiwan University Hospital (NTUH 国立台湾大学醫学院付設醫院)で、22日から26日までの間をChang Gung Memorial Hospital, Linkou (CGMH 林口長庚紀念醫院)で研修させていただきました。

 今回私たちはNUTHの本院で研修させていただきましたが5つの分院があり、本院には毎年13000人の外国人が受診しているとのことです。本院は台北の市街地のほぼ中心地にあり、整形外科は6500/年の手術がされているとのことでした。かつて台湾は日本の統治下にありましたが台湾大学医院 旧館(旧 台北帝国大学 医学部 附属医院)は、日本の統治が始まった直後の設立された「台湾病院」が前身で、1897年に現在の場所に移転しました。建物は、1912年に着工され1916年にほぼ完成し、1924年に現在の姿になりました。当時は、東アジア最大規模の病院でした。1938年には、台北帝国大学医学部の管轄下に入り附属病院となりました。戦後は、台湾大学医学院附設医院となり台湾の医学発展に貢献してきたという歴史があります。

 NUTHでは後方アプローチによるuncemented THA, midvastus アプローチによるcemented TKAを始め、テーラーフレームを用いた骨延長術や脊椎側弯症に対する変形矯正術も見学させていただきました。台湾でも日本と同じように整形外科の中でも幾つかのグループに分かれていますが、その中でも数名の先生は小児、脊椎、関節、外傷などのいくつもの分野を手術する先生がいることに驚嘆しました。また木曜日の朝には日本で医局会にあたるミーティングが催されました。そこではレジデントによる症例報告と上級医によるレビューが行われました。そこでは積極的な意見交換がされ、いずれの先生も日本ではどのような治療をされているか私たちに意見を求めてこられ、とても勉強熱心な姿勢がうかがえました。

 NTUHCGMHの研修の合間の休みには時間があったので台北市内を観光しました。有名な台湾101や故宮博物院、九份に行きました。また個人的初めて十份に行ったのがとても印象に残りました。そこで今後の私たちの抱負と千葉大学整形外科の今後の発展をランタンに記載し、天高く飛ばしました。

 CHMH Linkouは台北市中心部より快速電車で25分程度離れた工業地帯にある私立病院で台湾プラスティック・グループ社長の王永慶氏が、その父林長庚氏を記念して、 台湾住民に高水準の医療を提供するため、1976 年にまず台北に、ついで 1978 年に 林口に長庚紀念醫院を開設しました。現在は8つの分院を有しております。病床数は3000以上あり、台湾でも12を争う大規模病院であり現在コンピューター化が進んでいる台湾の病院の中でも他病院のモデルになっているとのことでした。手術室も全体で120室ほどありますが整形外科専用の手術室も15室あるということに非常に驚きました。そこで人工関節の手術だけでも多い時には20/日以上行われますが一人の先生だけでも部屋を代わる代わる移動し、1日で10件程度こなす姿には外からの見学だけでしたが着いていくのがやっとでした。CGMHでも人工関節の手術を主に見学させていただきましたがこちらの病院はRevisionの症例が台湾全土より集まるため多く、日本であまりRevisionの手術を見ることがなかった私にとってはいずれの症例も興味をそそられるものでした。中でも感染後の症例に対して抗生剤含有セメントによるmobile spacerを用いた二期的手術はとても印象に残る手術でした。基本的にprimaryの手術では手術当日には患者様を離床させ、翌日には退院するため日本では入院期間が台湾と比べて長いことを説明すると驚かれていました。また症例数が多いということで私と同年代の医師が難易度の高い症例の執刀している姿に大変刺激を受け、私自身もそうなれる様邁進しなければならないという気持ちにもなりました。

 東山先生のご厚意でCGMHの研修中に1日だけ嘉義にある分院にお邪魔させていただき見学をさせていただきました。ここの名誉院長である許教授は当教室の守屋名誉教授と親交があり、また日本語も達者でいらっしゃったため様々な経験談を聞かせていただきました。また許教授は5年前よりPRPの膝関節内注射を施行しており、私と井上先生に丁寧に説明していただき、短時間ではありましたが有意義な時間を過ごすことが出来ました。

 いずれの病院でも先生方は手術の見学を快諾していただき、また手術中・後には熱心に手術内容の説明や自分の考えをお話ししてくださいました。また夜には食事に誘っていただき、台湾の医療事情などを伺うこともできました。

 研修の終盤には2018102728日に開催された第75回中華民国骨科医学会(Taiwan Orthopaedic Association; 通称 TOA meeting)への参加および口演発表をする機会を与えていただきました。規模は日本整形外科学術集会に比べ小さいですが様々なところで相次い議論がされており、熱気は勝るとも劣らないものでした。私は足関節の外傷に関して、井上先生はOLIFに関して発表をさせていただきました。井上先生は第一会場とメインの会場での発表でしたがとても堂々と発表されており、素晴らしかったです。

今回の旅行で再度認識したことは台湾の医師の英語力の高さです。カルテや手術記録は基本的に英語であり、カンファや私たち日本からの見学者を交えての会話もすべて英語でした。台湾の先生方は日本の先生の英語力も素晴らしいと話されていたのですが私自身はまだその水準に達していないため今後とも自分の英語力を磨く必要があると実感いたしました。私を含めた若手医師はもっと国外に目を向けていく必要があるとも実感した2週間でもありました。

この台湾トラベリングフェローは私の父、葉國璽が主となって始めたものです。私の父が築いたこの日台の関係を今後もっとより深く、強くしていきたく思います。

最後になりますが、滞在中お世話になりました国立台湾大学醫学院付設醫院の王先生、李先生、長庚紀念醫院の張先生、徐先生、林先生、出国前、滞在中の共に全面的なバックアップを頂きました東山礼治先生、このような貴重な機会を与えて下さりました大鳥精司教授、また留守中大変お世話になりました大学の文部教官の先生方、股関節リウマチグループの先生方また病棟業務などでお世話になりました大学院の先生方とフレッシュマンの先生方に心より御礼申し上げます。

台湾トラベリングフェロー 小児整形

H25年卒 弓手惇史

 

 20181022日から20181027日の1週間の間、千葉県こども病院から台湾へトラベリングフェローとして参加させて頂いたためにご報告を致します。

 1022日から25日の4日間はChang Gung Memorial Hospitalに、26日はNational Taiwan University Hospitalで見学させて頂きました。

 Chang Gung Memorial Hospital , Linkouは林口市にある台北から車で40分ほどの場所に位置しており、年間の手術は11000件ほどの台湾国内でも有数の大規模病院です。小児整形外科としてはDr. Chia-Hsieh Chang を始めとする4人の上級医とレジデントで構成されていました。Dr. Chia-Hsieh Changの下で手術見学を致しましたが、股関節脱臼に対する日本と台湾の考え方の違いであったり、内反足に対する治療方法の工夫など、丁寧に教えてくださいました。特に印象的であったのは、橈骨遠位端骨折後偽関節に対する血管柄付き腓骨移植を形成外科とjointして行っていた症例でした。手術前にフェローが過去の文献を交えて流暢な英語でプレゼンを行っていました。一つ一つの疾患に対する真剣さや取り組み方は非常に勉強になりました。

 23日の夜にはProf. Ken N. Kuoを始めとする台湾の小児整形外科医による症例検討会に参加させて頂きました。日本の症例を英語で発表する機会を頂いたのですが、上手く伝えられないもどかしさとともに英語力の無さを痛感しました。

 26日にはNational Taiwan University Hospital での手術見学とProf. Ken N. Kuoの外来見学を行いました。National Taiwan University Hospital 1895年に設立された歴史のある非常に大きい病院です。2008年にはChildren’s Hospitalも新設されました。台湾小児整形外科の大家であるProf. Ken N. Kuoの外来には治療に難渋する症例が集まり、治療方針や手術方法の決め方などとても勉強になりました。夜には2018 Annual Meeting of Taiwan Orthopaedic Association (TOA)Welcome partyも開かれ、場違いながらも参加させて頂きました。非常に貴重な経験であったと思います。

 27日には2018 TOAで発表もさせて頂きました。初めての海外発表であり非常に緊張しました。やはり質問には上手く答えられませんでした。

 今回の訪台中は様々なイベントが目白押しであり、本当にあっという間でしたが、非常に刺激的でした。特に英語に関しては、台湾の医師は学生の頃から英語の教科書を用いており、英語でディスカッションを行う事に慣れているように感じました。世界に出ていくためにも、英語の必要性を強く感じました。また台湾の先生達は本当に親切であり、私の拙い英語を何とか理解しようと試みてくれたり、様々なおもてなしをしてくれたりと大変お世話になりました。本当に感謝しております。

 最後になりますが、今回の訪台の機会を下さった葉 國璽先生、西須孝先生や発表に関してご指導頂いた亀ヶ谷真琴先生やこども病院の先生方には心より御礼申し上げます。今回の訪台を今後自分の糧にし、千葉県こども病院に還元できるように努力していく所存です。