令和2年度千整会奨励賞、Award受賞のご報告

更新日 2021.1.12

令和3年1月

令和2年度千整会奨励賞、Award受賞のご報告

同門会会員各位

 

拝啓

新春の候、先生方におかれましてはますます御健勝のことと御慶び申し上げます。

このたび、昨年12/31をもちまして初めてのウェブ開催での教室例会が滞りなく終了しましたことをご報告申しあげます。同門の先生方の多大なご協力に、心より御礼申し上げます。

本年度の千整会奨励賞およびAward受賞の先生方より、受賞の声を頂きましたのでご報告させて頂きます。

来年度の教室例会は2021年12月4日(土)、5日(日)に開催予定です。来年度も多くの演題発表を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

敬具

 

各受賞者

2020年度千整会奨励賞(論文部門)

基礎部門:土屋流人先生(平成26年卒)

「Establishment and characterization of NCC‐DDLPS1‐C1: a novel patient‐derived cell line of dedifferentiated liposarcoma 」

 

この度は栄えある千整会奨励賞基礎部門にご選出頂き、大変光栄に思います。

私は現在国立がん研究センターにて腫瘍の基礎研究を行っております。腫瘍の中でも我々整形外科医が扱いうる骨軟部腫瘍は、希少がんであるために実験のモデル系が不足もしくは組織型によっては存在しないという状況であり、基礎研究を行うことが難しいという大きな問題点があります。そのため私が今所属しております研究室では、骨軟部腫瘍のモデル系を作成することで、今後の骨軟部腫瘍研究における基盤を構築しております。今回奨励賞にご選出頂きました論文は、その一環で樹立した脱分化型脂肪肉腫細胞株に関する内容となっております。脱分化型脂肪肉腫は化学療法や放射線療法に抵抗性であり、新規治療法が望まれます。今回論文化させて頂いた新規細胞株は、今後新たに抗がん剤などを開発するうえで有用なツールになるものと考えております。

今回の奨励賞受賞を糧に、ますます研究に邁進して成果を残せるよう努力していきたいと思います。今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

 

 

臨床部門:佐藤崇司先生(平成23年卒)

「Diagnosis of lumbar radiculopathy using simultaneous MR neurography and apparent T2 mapping 」

 

 この度、日整会奨励賞臨床部門にて御採択を頂きました大学院の佐藤崇司です。思いもかけずこのような栄誉ある賞を頂いたことを心より光栄に思っています。
 本研究ですが、以前より腰椎グループの画像診断チームで取り組んでいるMRIによる脊椎神経根障害の診断について、新たな視点からの解析を可能とするシーケンスであります『SHINKEI-Quant』について、腰椎神経根障害患者様32例と健常者5名での解析結果をまとめたものです。本論文の結論として、本シーケンスは腰椎神経根障害の解析において、脊柱管の内側狭窄・外側狭窄の区別を問わず非常に感度の高い検出がピンポイントで可能であること、下肢痛を伴う神経根障害において下肢痛の強さと検出力はよく相関することが示されました。
 今後の展望として、これまでのMRI画像では画質の限界で不可能であった頚椎神経根障害の高位診断が本シーケンスにより可能となり、その結果として、これまで以上に低侵襲の手術を選択できるようになるという展望をもっています。腰椎画像診断グループでは今後も第2第3の研究報告を準備していますので、どうぞご期待いただけますと幸いです。
 最後に、研究アイデアや方法について何度もご指導を頂きました大鳥教授と脊椎グループ教官、患者様の本研究へのリクルート・研究用シーケンスの撮影まで大変な労力とお時間を頂きました東千葉メディカルセンターの先生方とフィリップス社の皆様、未熟な私に研究の基礎からご指導を頂きました江口和特任准教授など、多くの方々の御支援があって完成した本研究をご評価頂けた事に、皆様への感謝も含め改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 

若手部門:山田有徳先生(平成29年卒)

「Automated classification of hip fractures using deep convolutional neural networks with orthopedic surgeon-level accuracy: ensemble decision-making with antero-posterior and lateral radiographs 」

 

このたびは第5回千整会奨励賞(若手部門)を頂き,大変光栄に存じます。本論文は,令和元年度千葉医学会整形外科例会にて発表させていただきました「人工知能を用いた大腿骨近位部骨折の診断」の研究をアップデートし論文化したものです。

 近年,人工知能(artificial intelligence: AI)や深層学習(deep learning)を医療分野へ応用した研究が盛んになってきており,中でも深層学習の手法である畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network: CNN)は,画像認識において高い性能を持つことが知られております。今回我々は股関節単純X線画像を用いてCNN による大腿骨近位部骨折の診断を試み,CNNは整形外科専門医と同等以上の精度で診断が可能であることを報告いたしました。

 受賞にあたり,本研究・論文作成を全面的にご指導いただきました大学の牧聡先生,昨年度の研修先で本研究をご支援いただきました聖隷佐倉市民病院の南昌平先生,小谷俊明先生,岸田俊二先生をはじめとする先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。また,このような貴重な機会をくださいました大鳥精司教授をはじめ同門の先生方に心から感謝申し上げます。今回の受賞を励みに,今後より一層精進して参りますので,今後ともご指導ご鞭撻の程,何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

千整会Award(発表部門)

基礎部門:穂積崇史先生(平成25年卒)

「疼痛慢性期における脊髄の遺伝子発現プロファイルの特徴とCdkl5の機能に関する検討」

 

本年度の教室例会にて「疼痛慢性期における脊髄の遺伝子発現プロファイルの特徴とCdkl5の機能に関する検討」という演題で基礎部門のAwardを頂きました。

数ある素晴らしい演題の中より選出頂き大変光栄に存じます。

2019年4月より千葉大学大学院医学研究院 機能形態学教室に所属しご指導頂いております。当教室では筋委縮性側索硬化症や脳梗塞など神経疾患に関する研究を行っており、私は「慢性疼痛と中枢神経の変化」というテーマを頂きました。

慢性疼痛は一般に難治で、有訴率も高く世界で問題となっております。疼痛慢性化の機序は未だに解明されておりませんが、その中でも脊髄は介在ニューロンやグリア細胞、下降性疼痛抑制系などが作用する重要な部位とされます。我々はRNA-seqを用い、脊髄の遺伝子発現変化を疼痛の急性期と慢性期で比較しその特徴を考察致しました。

慢性疼痛は千葉大学整形外科が長年取り組んできたテーマでもあり、諸先輩方の業績を引き継ぎ研究を行えることを大変光栄に存じます。

失敗が多く結果に繋がらない時期も長くございましたが、熱心にご指導下さいました山口淳教授をはじめ機能形態学教室の先生方、そしてこのような貴重な研修の機会を下さいました大鳥精司教授と整形外科の先生方に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。

 

 

臨床部門:沖松翔先生(平成25年卒)

「機械学習を用いた頸髄損傷の予後予測」

 

この度、演題”機械学習を用いた頚髄損傷の予後予測”で千整会Award(臨床部門)を受賞致しましたのでご報告申し上げます。

私の研究は、人工知能技術を用いて、頚髄損傷受傷患者における

  • 受傷時の頚椎MRI
  • 受傷時ASIA Impairment Scale(以下AIS)
  • 年齢

の3つの要素から、受傷1ヶ月後のAISを予測するというものです。結果、約71%の正確度でAISを予測可能なモデルを作成することができました。人工知能を使用した頚髄損傷の予後予測の報告がほとんどない中で、比較的精度が髙いモデルであると考えております。しかし大きなLimitationとして、受傷1ヶ月は症例によっては神経症状の回復途中で長期的な予後とは言えず、受傷後1年以降の長期予後も検討していく必要があると考えております。重症度が髙い方ほどdrop out率が高く、このような予後の研究を行うにあたって長期的にフォローをしていく施設間同士の仕組みづくりも非常に大切だと感じました。

最後になりましたが、データ収集にご協力頂いた関連病院の先生方、ご指導頂きました、牧先生、古矢先生はじめ、千葉大整形外科教官の先生方にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。今後ともご指導、ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

 

 

若手部門:大山秀平先生(平成29年卒)

「術前の立位時腰椎アライメントが単椎間腰椎椎体間固定術の術後成績に及ぼす影響 」

 

この度、第1431回千葉医学会整形外科例会の若手部門Awardをいただきましたのでご報告致します。

 本研究は、術前において仰臥位と比較して立位でより腰椎後弯となる症例では単椎間TLIF術後に下肢痛・下肢しびれ・立位時腰痛といった術後遺残症状が強い、という内容であり、後方椎体間固定術前において立位と仰臥位のLumbar Lordosisの差異と術後臨床成績、術後alignmentの関連を調査した臨床研究の一端として発表させていただきました。

 このような過分なご評価をいただいたことに感謝申し上げるとともに、日常診療において本研究が少しでもお役に立てましたら幸甚の至りでございます。

 日常診療を含めて本研究について日々絶え間なく懇切丁寧にご指導くださいました青木先生、平素の診療を手厚くサポートしていただきました中嶋先生、佐藤先生、井上先生に深く御礼申し上げます。

 これを励みに今後とも精進致しますので、ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

 

 

千葉大学大学院医学研究院整形外科学

 教授 大鳥 精司

医局長 古矢 丈雄

事務担当代表 橋本 瑛子

事務担当 三上 行雄