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若い女性医師の皆さんへ

更新日 2017.1.23

平成19年卒 金塚彩

 平成19年卒、平成21年度入局の金塚彩と申します。現在大学病院整形外科の手外科グループと医学部の環境生命医学教室に所属しています。私自身未熟で、あまり参考にならないかもしれませんが、良かったらお読み下さい。

1. 入局以降の日々はどんな感じ?

 私は2年間の初期研修を経て入局しました。私の性格や外見がとてものんびりしているためだと思うのですが、入局宣言をした当時、多くの整形外科の先生方をびっくりさせてしまいました。何より私自身自分がやっていけるか不安でしたし、あれこれおっかなびっくり、毎日心身ともに全力を使い果たした気持ちでした。今も臨床の難しさをいつも感じます。尊敬する先輩方・師匠に出会えましたが、自分はいつも不十分な気がしてしまい落ち込むことが多いです。それでもなんとか元気にやれているのは、千葉大整形外科の懐の深さ以外の何物でも無いと思います。力が必要な手技もいくつかありますし、オンコールで呼び出されたり当直が忙しかったりすれば体力勝負になりますが、それが全てでは決してありません。私は入局して本当に良かったです(最近すごく思うこと)。

2. 大学院生として

 外病院で外傷を中心に経験を積んだ後、大学院に入学しました。研究テーマは《横手根靱帯上に存在するHypertrohpic Thenar Muscleの解剖学的検討》と《音楽家の演奏に関連する筋骨格系障害の疫学調査と適切な専門的治療に関する考察》です。論文を読んだり、研究したり、外病院時代とは違った毎日です。興味ある分野について深く追求することが出来ます。英語が好きなので国際学会に出席できるのがすごく嬉しいです。知見を広め、海外の空気を吸い、グループ内の連帯感が高まり、良いことずくめです。

3. 医学部・学生教育への関わり

 私は卒業後、実にひそやかにいつか学生教育に関わりたいという情熱を心の奥で燃やし続けていました。そんな折まったく偶然に、医学部2・3年生の肉眼解剖学実習の指導に携わる任務をいただきました。恥ずかしながら私自身解剖学が苦手だったので、卒業後に2回も学ぶチャンスを戴けたことに感謝しています。また私は卒業後仕事面で悩みや苦労も大きかったので、学生のみんなには同じ問題で悩む必要がないことに関しては経験してほしくなかったし、また身近に相談できる存在でありたいと常に考えていました。正直言って医学生のときの成績はたいしたことはありませんでしたが、それでも勉強することが大好きなのでとても楽しめました。それはそのまま後輩を教えることの楽しさにつながっています。

4. 夢

 私は小さい頃から音楽が大好きで、現在もピアノやバイオリンを嗜みます。ここ最近ようやくオーケストラ活動を再開し、仕事の合間に練習するのを密かな楽しみにしています。そもそも私が手外科を選んだのは、手外科の先輩である岩倉菜穂子先生がIan Winspur先生の The Musician’s Hand : A Clinical Guide -という教科書を下さり、急速に魅了されたからです。
 大学院卒業後はロンドン大学(UCL)大学院で教鞭をとられているWinspur先生のもとに留学してノウハウを習得したいと思っています。直近では昨年11月に続き今年5月にベルリンにあるシャリテ医科大学のAlexander Schmidt教授がheadを務める音楽家のための医療センターを訪れる予定です。日本にはプロフェッショナルの音楽家やアーティストを学際的に診療しうるセンターは未だ存在していません。いつの日か我が国にも、音楽家の方々が生涯安心して演奏活動を継続できるような医療面でのサポートシステムが確立できたら、、、それが夢です。そして私生活では家族や仲間をずっと大切にしていきたいです。互いを心から思いやる両親の絆を見て今深く想うことです。努力したいと思います。

5. 若い女性医師の皆さんへ — 何科に行くか? —

 医学部に進学する人たちの多くは恵まれた環境 — 勉強に集中することができる様々なバックグラウンドという意味で — で、かつ学校や塾などで自分と似た環境の仲間の中で日々を過ごしてきたと思います。しかし大学を卒業し突然社会に放り出されると、そこには異なる背景や価値観を持つ医師、コメディカルの方や患者さんと日々向き合うことになります。特に研修医時代は数え切れない挫折を味わい、不条理な出来事に振り回され、やる気を失いそうになる時もあります。そんな混沌とした状況で、モデルケースも少なく情報不足な中で科を決めるためのタイムリミットが近づいてきます。迷いなく決められた同期もいましたが。
 私が科を決めるときには、“やりたいことをやろう”“やらないで後悔するよりはやって後悔した方がまし”、ということで決めました。どんな困難も自分が自分のために決断したことからは逃げようもないし、またたいていのことは乗り越えていけます。というか頑張っているとどこからともなく救いの手が差し伸べられ、数え切れないほど先輩や後輩に助けて戴きました。また千葉大整形外科全体の雰囲気がとても良いところも決め手でした。
 女性だから、という枕詞は様々な意味合いを含んでいます。現状として女性が少ない科はまだ多く、システムが完成している科や病院はほとんどないので、助けてもらって当たり前という風には思わず、私達も精一杯取り組む姿勢を常にとりましょう。男女問わずお互いに支え合い、感謝しながら、ぜひ一緒にがんばりましょう。Where there is a will, there is a way.

平成19年卒 金塚彩